小烏丸

小烏丸について

概要

小烏丸、または小烏（こがらすまる）は、平安時代中期に制作されたとされる日本刀であり、伝説上の刀工「天国」によって作られたと伝わります。この太刀は天皇から平家一門に下賜された家宝であり、現在は皇室の私有財産として、国立文化財機構で保管されています。記録によれば、『源平盛衰記』において平家の重宝として「唐皮」や「抜丸」と並んで言及されています。

刀の歴史と伝来

小烏丸は平貞盛が承平天慶の乱を鎮圧する際に天皇から拝領した後、平家に伝わる重要な宝物となりました。壇ノ浦の戦いで平家が滅亡した際には、この刀は行方不明となりましたが、江戸時代の1785年になり、平家の流れを汲む伊勢氏が保管していたことが確認されました。伊勢家は幕府に対し、刀身とその背景を示す文書を提出しました。この小烏丸は、その後徳川将軍家に献上されましたが、将軍家はこれを伊勢家に預け続けました。

明治15年には、宗重正伯爵から明治天皇に献上され、現在は皇室御物として宮内庁の管理下にあります。刀身の茎には天国の銘があったという伝承がありますが、現存する刀身にはその銘は確認されていません。

名称の起源

「小烏」という名前については、いくつかの仮説があります。福永酔剣は以下の三つの説を提案しています。
1. 桓武天皇のもとに烏が伊勢神宮の使者として降り、刀を落としたという伝説。
2. 平貞盛が天慶2年に平将門の乱で刀を拝領し、将門の兜にあった烏の像を切った物語。
3. 幕末の国学者によって提唱された小韓スキが小韓スになったという文字遊び。

刀身と外装の特徴

小烏丸の刃渡りは62.8センチメートルで、反りは1.2センチメートルです。茎は長さ19.9センチメートルで、腰元から強い反りが見受けられます。この刀の鎬は刀身の中央にあり、表裏には樋が掘られ、地鉄は小板目肌で流れ模様を成しています。刃文は直刃であり、刃中の働きが豊かです。なお、刀身は江戸初期に本阿弥光悦が押形を取った記録があり、昔の文書には「大宝□年□月日 天国」の銘が見られますが、現在のものにはその銘がありません。

小烏丸は、柄や鞘ともに紺地雲龍文様の錦で装飾され、明治時代に作られた外装が付けられています。この外装は、過去の文書や資料を参考にして復元されたものです。

小烏造について

小烏丸は「鋒両刃造」と呼ばれる独特の作り方で、刀身の先端が両刃になっています。この形状は、奈良時代末期から平安時代中期にかけて、刺突目的の直刀と切断目的の湾刀の過渡期に考案されました。小烏丸はこの形状の代表例であり、小烏造とも呼ばれています。現存する他の刀剣の中にもこの造りのものがあり、それらは学術研究にとって重要な資料となっています。また、日本陸海軍の元帥刀にもこの様式が採用されています。

その他の小烏丸

他にもいくつかの小烏丸が存在しています。福永酔剣の研究では、源氏の重宝としての小烏も言及されています。それは源為義が作った刀で、「小烏」と名付けられていたとのことです。

さらに、岐阜県高山市にある飛騨国分寺が所蔵する2尺5寸の太刀も重要文化財として認定され、別の小烏丸として知られています。このように、小烏丸には多様な歴史的背景と文化的価値があります。

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