源為義

源為義：栄光と挫折の生涯

源為義は、平安時代末期を彩った武将の一人です。祖父は源義家、父は源義親と一般的には考えられていますが、義家を父とする説も存在し、その出自については諸説あります。叔父（または兄）の源義忠暗殺後には河内源氏の棟梁を名乗り、六条判官や陸奥四郎といった通称でも知られています。源頼朝、源義経、源範頼、源義仲といった、後の歴史を大きく動かすことになる人物たちの祖父にあたります。

生い立ちと初期のキャリア

永長元年（1096年）、源為義は誕生しました。『尊卑分脈』によれば源義親の四男とされていますが、近年では義家の四男とする説も有力視されています。幼少期は祖父である義家や叔父である義忠と共に京で過ごしたと推測されています。義忠が家督を継いだ後、天仁2年（1109年）に義忠が暗殺されるという事件が起こります。この事件で嫌疑をかけられた義綱一族の追討に為義は参加し、功績を上げて左衛門少尉に任じられました。

その後、為義は白河法皇や鳥羽上皇に仕え、検非違使として活躍しました。永久の強訴や延暦寺の強訴といった事件では、平忠盛と共に防御に当たったと記録されています。しかし、為義の昇進は遅々として進まず、その原因は彼自身と郎党による数々の乱行でした。

数々の乱行と失脚

為義と郎党は、殺人犯の匿匿、年貢の強奪、寺院や貴族への暴力など、数々の事件を起こしました。これらの事件により、為義は鳥羽上皇の怒りを買い、検非違使を辞任することになります。その後、高野山の覚鑁に祈祷を依頼するなど、院への復帰を図りますが、なかなか思うようにはいきませんでした。

摂関家への接近と再興

院の信任を失った為義は、摂関家である藤原忠実・頼長父子への接近を試みます。興福寺の悪僧追捕などの功績により、忠実・頼長父子の信頼を得て、康治2年（1143年）には従五位下左衛門大尉に任じられ、検非違使に復帰を果たします。この頃には、鳥羽法皇の怒りも収まり、祇園闘乱事件では院の命令で防御に出動するなど、再び活躍の場を得ます。

義朝との確執と保元の乱

しかし、為義の復帰と同時に、東国で勢力を伸ばしていた長男の源義朝が帰京します。義朝は熱田大宮司家を通じて鳥羽法皇に接近し、摂関家と結んだ為義と対立するようになります。為義は義朝を警戒し、次男の義賢を後継者に据えようとするなど、親子関係も険悪化していきます。さらに、八男の源為朝の乱行によって、為義は再び解官されます。

保元元年（1156年）、保元の乱が勃発します。為義は崇徳上皇方として戦いに出ますが、後[[白河天皇]]方の義朝らに敗れます。敗戦後、為義は義朝に降伏し出家しますが、義朝の助命嘆願も虚しく、義朝によって斬首されました。享年61歳でした。

河内源氏の棟梁問題

為義は河内源氏の棟梁を称していましたが、その地位は確固たるものではありませんでした。義忠の死後、河内源氏の家督は明確な継承者がいなかったため、為義、義朝、頼朝と継承されたという見解は後世の解釈であり、為義在世中は複数の系統が並立していた可能性が高いです。義朝が棟梁としての地位を確立したのは、保元の乱後、わずか3年間のことでした。治承の乱では、義朝の子である頼朝と、為義の他の息子である義仲などが源氏の棟梁を争い、最終的に頼朝が源氏全体をまとめることになります。

まとめ

源為義は、複雑な出自、数々の功績と失態、そして複雑な親子関係など、波乱に満ちた生涯を送った人物です。彼の生涯は、平安時代末期の政治・軍事状況や、源氏の内部抗争、そして鎌倉幕府成立への道筋を知る上で、非常に重要な手がかりとなります。様々な史料の解釈の違いも踏まえつつ、多角的な視点で彼の生涯を捉え直すことが重要です。

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