小獣林王

小獣林王（しょうじゅうりんおう）

小獣林王（生年不詳 - 384年）は、高句麗の第17代の王であり、371年から384年まで在位しました。諱は丘夫、別名として小解朱留王とも呼ばれています。先代の故国原王の子として生まれ、355年に皇太子に指名されました。371年10月に故国原王が百済との戦いで命を落としたため、王位を継承しました。

治世と業績

即位当時、高句麗は前燕への敗北や百済との戦いでの王の戦死などにより、軍事力が低下していました。小獣林王は、国家の立て直しに尽力します。

内政の安定化

仏教の受容と奨励: 372年、前秦の苻堅が派遣した僧侶、順道を受け入れます。375年には肖門寺を建立して順道を住まわせ、その後高句麗入りした阿道のために伊弗蘭寺を創建しました。『三国史記』では、この寺の創建を高句麗における仏教の始まりとしています。
儒教教育の推進: 372年には太学を設立し、儒教による教育を奨励しました。これにより、国家の人材育成を図りました。
律令の制定: 373年には、高句麗初の律令を制定しました。ただし、律令の内容は伝わっておらず、従来の慣習法を成文化したものと考えられています。
対外関係の維持: 前秦との関係を重視し、377年には朝貢を行いました。これにより、中国との良好な関係を維持し、安定した外交環境を築きました。

外交・軍事

百済との対立: 百済とは、領土を巡り攻防を繰り返しましたが、大きな戦果は得られませんでした。
契丹の侵攻: 北方では、378年に契丹の侵略を受け、8つの集落が略奪される被害を受けました。

死去とその後

小獣林王は、在位14年にして384年11月に亡くなりました。小獣林の原に埋葬され、小獣林王と諡されました。

小獣林王の時代は、国内の立て直しと文化の発展に重点が置かれた時期でした。仏教の受容、儒教の奨励、律令の制定などは、高句麗の国家体制を整え、文化的な基盤を築く上で重要な役割を果たしました。しかし、百済との対立や契丹の侵攻など、外的脅威に晒される時代でもありました。


参考文献
井上秀雄『古代朝鮮』、日本放送出版協会＜NHKブックス172＞、1972 ISBN 4-14-001172-6
『三国史記』第2巻 金富軾撰 井上秀雄訳注、平凡社〈東洋文庫425〉、1983 ISBN 4-582-80425-X

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