徳川四奉行

徳川四奉行

徳川四奉行とは、天正10年（1582年）に武田氏が滅亡した後、甲斐国を領有した徳川氏が、旧武田氏の家臣から登用した四名の奉行を指します。彼らは、徳川氏の関東移封までの間、甲斐国の統治を補佐する重要な役割を担いました。

四奉行成立の背景

天正10年3月、織田・徳川連合軍の甲斐侵攻により武田氏は滅亡しました。その後、6月には本能寺の変が発生し、武田氏の遺領を巡って天正壬午の乱が起こります。この混乱の中、甲斐国は徳川家康が領有することとなりました。

天正壬午の乱の過程で、一部の武田遺臣は家康に臣従し、成瀬正一の庇護を受け徳川氏に仕えることとなります。徳川四奉行は、成瀬正一と日下部定好の両職の補佐として、甲斐国の統治を担いました。

初期の四奉行には、三枝虎吉、石原昌明（四郎右衛門尉）、市川元松、工藤喜盛が任命されました。彼らは、甲斐国内の行政や訴訟、検地などの実務に携わり、徳川氏による甲斐国支配の安定化に貢献しました。

四奉行の変遷

四奉行は、その後の歴史の中で、メンバーの入れ替わりがありました。

三枝虎吉：天正10年12月13日から天正11年2月24日まで連署状に署判していましたが、天正11年5月14日に死去しました。
桜井信忠：虎吉の後任として、天正11年10月より安芸守として四奉行に就任しました。
市川元松：文禄2年（1593年）に死去しました。
工藤喜盛：没年は不明ですが、慶長年間に死去したと考えられています。
小田切茂富：市川元松と工藤喜盛の死去に伴い、慶長6年から大隅守として四奉行に就任しました。
跡部昌忠：同じく慶長6年から九郎右衛門尉として四奉行に就任しました。

四奉行の活動とその後

天正18年（1590年）に、徳川家康は豊臣政権の命により関東へ移封され、それに伴い武田遺臣たちも家康に従って関東へ移りました。甲斐国は、羽柴秀勝、加藤光泰、浅野長政・幸長親子の豊臣系大名が支配することとなり、この時期に甲府城が築城されました。

慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いの後、甲斐国は再び徳川氏が領有することとなります。慶長12年（1607年）8月には、小田切茂富と桜井信忠が平岩親吉より甲府城の受け取りを命じられています。

『寛永諸家系図伝』によれば、石原昌明は慶長12年（1607年）に死去し、桜井信忠と小田切茂富は慶長16年（1611年）に相次いで死去しました。

「四奉行」という呼称は、高野山成慶院の『甲斐国供養帳』において、慶長12年11月12日に死去した跡部昌忠の追善供養の記載に使用されており、少なくとも慶長期には「四奉行」という呼称が定着していたことが確認できます。

参考文献

丸島和洋 著『武田氏家臣団人名辞典』東京堂出版、2015年

関連項目

甲斐一条氏
* 米倉氏

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