小田川全之

小田川全之：近代日本の発展を支えた土木技術者、古河財閥幹部

小田川全之（おだがわ/おたがわ まさゆき、1861年4月1日 - 1933年6月29日）は、幕末から昭和初期にかけて活躍した実業家です。古河財閥の幹部として、足尾銅山の鉱害問題解決や鉄道事業など、多岐にわたる分野でその才能を発揮しました。

生い立ちと教育

文久元年（1861年）、幕臣・小田川彦一の長男として江戸に生まれました。父・彦一は幕府の役人であり、明治維新後に沼津へ移住。全之は沼津兵学校附属小学校に入学し、真野文二や田辺朔郎らと共に学びました。その後、東京英語学校（後の第一高等学校、現在の東京大学教養学部）を経て、工部大学校（現在の東京大学工学部）土木科を卒業。ここで、土木技術者としての基礎を築きました。

古河財閥での活躍

大学卒業後、群馬県や東京府に勤務し、道路や橋梁などの建設に携わりました。その後、民間での土木事業を経て、1890年に古河市兵衛の知遇を得て古河家に入り、足尾銅山の土木事業を指揮することになります。特に、足尾銅山鉱毒予防工事には尽力し、その解決に大きく貢献しました。1900年には、土木・鉱山事業の調査のため欧米を視察し、海外の先進技術を学びました。1903年には古河本店（古河鉱業、古河機械金属の前身）理事に就任し、1911年から1915年まで足尾鉱業所長を務めました。1921年まで古河財閥の諸事業に関与し、その発展に大きく貢献しました。

多岐にわたる事業への貢献

古河財閥での活動以外にも、1909年には足尾鉄道を創立し社長に就任。鉄道事業の発展にも寄与しました。また、1921年には古河銀行監査役にも就任し、金融面からも古河財閥を支えました。

学会活動

小田川全之は、実業家としてだけでなく、技術者としても高い評価を受けており、アメリカ鉱業会、土木学会、イギリス土木学会、電気学会などの会員として、積極的に学会活動にも参加しました。

家族

妻むつとの間に、一男二女をもうけました。長男の小田川達朗は京都帝国大学工学部教授を務め、工学博士となりました。二男の芳朗は古河財閥の重役を務めました。

晩年

1933年（昭和8年）6月29日、永眠。墓所は多磨霊園にあります。

小田川全之は、日本の近代化を支えた土木技術者、そして古河財閥の幹部として、その名を歴史に刻んでいます。

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