小笠原貞信

小笠原貞信（おがさわら さだのぶ）

小笠原貞信は、江戸時代前期に活躍した大名であり、その生涯は複数の藩の藩主を歴任するという異例なものでした。信嶺系小笠原家三代目として、下総関宿藩の二代藩主、美濃高須藩主を経て、最終的には越前勝山藩の初代藩主となりました。

生涯

寛永8年（1631年）、旗本・高木貞勝の長男として美濃国で誕生しました。母が小笠原信之の娘であった縁から、下総関宿藩主・小笠原政信の婿養子となり、小笠原家を継ぐことになります。寛永17年（1640年）、養父・政信の死去に伴い、わずか10歳で関宿藩主となりましたが、幼少を理由に、すぐに美濃高須藩へ移封されました。その後、元禄4年（1691年）に越前勝山藩へ移されます。

相次ぐ移封に加え、元禄5年（1692年）から元禄6年（1693年）にかけての大坂加番による出費が重なり、藩の財政は逼迫しました。これに対処するため、貞信は年貢の増徴を含む財政改革を断行しましたが、これが領民の反発を招き、元禄10年（1697年）には百姓の逃散や江戸への越訴が発生。最終的に年貢の減免を余儀なくされました。

元禄15年（1702年）、貞信は家督を孫である小笠原信辰に譲り隠居しましたが、その後も「大殿」として藩政の実権を握り続けました。このことが藩内の混乱を招き、家督争いや主導権争いが頻発しました。正徳4年（1714年）、84歳で死去しました。

人物像

史書では、年貢増徴により領民を苦しめ、隠居後も藩政を牛耳ったことから、暗君と評されることが多いです。しかし、文化人としての側面も持ち合わせ、文筆に優れていたとされます。孫の小笠原信辰は、貞信を「言語明白で優れた人物」と評価していますが、これは孫による贔屓や庇い立てが含まれている可能性が高いとされています。

『土芥寇讎記』では、貞信が「文武に関心がなく、政治を疎かにして遊惰逸楽に耽った」と記されていますが、『岐阜県史』では貞信統治期に高須領内の開発が進んだことが指摘されており、勝山市指定文化財の『歴代藩侯藩士書画』には貞信が描いた絵画が複数残されているなど、史料によっては異なる評価がなされています。

系譜

実父：高木貞勝
実母：小笠原信之の娘
養父：小笠原政信
正室：小笠原政信の娘
継室：遠藤慶利の娘
子女：
小笠原清信（長男）
小笠原信秀（次男）
小笠原貞政
秋山正輔正室
養子：小笠原信辰（小笠原信秀の長男）

関連項目

開善寺 (勝山市)

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