小笠原長春 (若狭守護代)

小笠原長春（おがさわら ながはる）は、室町時代に生きた武将であり、一色氏の家臣として知られています。

応永4年（1397年）、父である小笠原長房の死後、長春は若狭国・三河国・尾張国知多郡の分郡守護代という要職を継承しました。同時に彼は剃髪し、明鎮（みょうちん）と号しました。

しかし、わずか2年後の応永6年（1399年）8月、一色詮範（いっしき あき nori）によって若狭守護代の職を解任されてしまいます。主君である詮範との間に何らかの確執が生じたと考えられますが、その詳細は明らかになっていません。ただし、若狭以外の守護代職は引き続き務めていました。

詮範の子である満範（みつのり）の代になると、守護である一色氏と守護代である小笠原氏の対立は頂点に達します。応永13年（1406年）10月1日、明鎮（長春）とその子である長頼（ながより）は、京都にある満範の屋敷で捕らえられ、守護代職を剥奪された上で、丹後国石河城（たんごのくに いしこじょう）に監禁されるという憂き目に遭いました。この事件は、小浜八幡宮（おばまはちまんぐう）の裏山で鹿狩りを行った祟りであるとも伝えられています。

小笠原氏が守護権力を脅かすほどに力をつけたことが一色氏に警戒された、あるいは一色氏内部の新旧家臣団の勢力争いに敗れた、などが失脚の原因として考えられています。

明鎮父子が幽閉された後、小笠原氏の根拠地であった三河幡豆郡（みかわ はずぐん）では、小笠原長正（おがさわら ながまさ）（安芸守、明鎮の叔父または弟）が蜂起し、一色軍と交戦しました。しかし、応永15年（1408年）12月26日、長正は一族郎党数十人と共に討ち死にしてしまいます。

幡豆小笠原氏壊滅直後の応永16年（1409年）1月6日、一色満範が没します。そしてその2ヶ月後の3月、明鎮父子は石河城にて切腹を命じられました。『小笠原氏覚書』や幡豆町にある安泰寺（あんたいじ）の過去帳によれば、没日は3月9日とされています。

小笠原長春の生涯は、室町時代の武将の運命を象徴するかのようです。一色氏との関係、守護代としての地位、そして悲劇的な最期は、当時の社会情勢や権力闘争を色濃く反映しています。

参考文献

「福井県史　通史編2　中世」
「吉良町史　中世後期・近世」
「財団法人愛知県埋蔵文化財センター調査報告書第69集」
河村昭一「南北朝室町初期の若狭守護代小笠原氏について」

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