小笠原長逵

小笠原長逵：先見の明を持つ藩主の生涯

小笠原長逵(おがさわら ながみち)は、播磨国安志藩の第2代藩主として知られています。小笠原忠脩を祖とする小笠原家の7代当主であり、その生涯は藩政における改革と、時代を先取る施策の実施によって特徴づけられます。

誕生と安志藩相続

長逵は正徳3年(1713年)、豊前小倉藩主・小笠原忠基の次男として誕生しました。幼少期から高い教養を受け、将来を嘱望されていたと推測されます。享保15年(1730年)、子を持たなかった初代安志藩主・小笠原長興の養子となり、同年末には長興の隠居に伴い、安志藩主の座を継承しました。長興の妹を養女として迎え、正室としたことは、両家の関係強化を図る政治的な側面もあったと考えられます。

先駆的な藩政改革

長逵の藩政における最大の功績は、宝暦5年(1755年)に導入された「夫食付方仕法」と呼ばれる共済制度です。これは、貧困に苦しむ百姓を無償もしくは有償で救済する制度で、生活基盤の安定に大きく貢献しました。特筆すべきは、この制度が幕府が天明5年(1785年)に同様の制度を導入する実に30年も前に実施されていたことです。長逵の先見性と、民衆への深い理解を示す政策と言えます。この制度は、長逵の優れた政治手腕と、民衆への温かいまなざしを物語る重要な出来事です。当時としては画期的な施策であり、長逵の統治の下、安志藩は安定した発展を遂げたと言えるでしょう。

家族と晩年

長逵は、小笠原長興の養女を正室に迎えました。また、側室との間に複数の男子をもうけています。その中には、後に大岡忠恒の養子となった大岡忠與や、小笠原忠総の養子となった小笠原忠苗も含まれます。これらの養子縁組は、藩の安定と、一族の繁栄を目的とした政治的な側面もあったと推察されます。

明和7年(1770年)、58歳でこの世を去りました。跡を次男の長為が継ぎましたが、長為は若くして亡くなったため、安志藩の行く末は、新たな課題を突きつけられることとなりました。

系譜

父: 小笠原忠基 (1682年-1752年)
母: 松室氏
養父: 小笠原長興 (1712年-1786年)
正室: 小笠原長円の娘
次男: 小笠原長為 (1745年-1782年)
側室: 小林氏
四男: 大岡忠與 (1755年/1759年-1786年) - 大岡忠恒の養子
三男: 小笠原忠苗 (1746年-1808年) - 小笠原忠総の養子
五男: 小笠原政宣
女子: 水野勝起継室

まとめ

小笠原長逵は、優れた政治家として、そして民衆を思いやる藩主として、安志藩の歴史に大きな足跡を残しました。「夫食付方仕法」という先駆的な政策は、彼の先見性と、民衆への深い理解を示すものとして、高く評価されるべきでしょう。彼の功績は、現代においても学ぶべき点が多く、歴史に名を刻むに相応しい人物と言えるのではないでしょうか。彼の生涯は、藩主としての責任感と、民衆への慈悲深い心が両立した稀有な例として、後世に伝えられるべきものです。

もう一度検索