小笠原長遠

小笠原長遠（おがさわら ながとお）は、生没年不詳ながら、幕末の動乱期に幕臣として活躍した人物です。旗本の家柄であり、通称は弥八郎、官名としては河内守を名乗っていました。

文久3年（1863年）には、幕府の中奥小姓という役職から目付へと昇進しました。その後、慶応3年（1867年）には京都見廻役という要職に就任し、京都の治安維持に尽力しました。同年12月には、王政復古によって新遊撃隊という組織に名称が変更されたことに伴い、新遊撃隊頭に任命されました。しかし、その年の9月に病を患い、同年12月には役職を退くこととなりました。隠居後は忍斎と号し、静かな生活を送りました。

明治時代に入り、静岡藩が成立すると、小笠原長遠は静岡に移住しました。明治3年（1870年）4月、坂本龍馬暗殺事件に関して、今井信郎が襲撃について自供しました。その際、今井は当時の見廻役が小笠原であったと供述したため、刑部省は静岡藩を通して小笠原長遠を問い詰めました。これに対し、小笠原長遠は「自身は無関係である」と主張しました。慶応3年（1867年）9月から病を患っており、龍馬暗殺当時の11月にはまだ退役前であったものの、配下による襲撃を知らなかったことは無念であり、恐縮するばかりであると述べました。静岡藩は小笠原長遠の主張を信用できるものと判断し、その旨を刑部省に報告しました。

小笠原長遠は、幕末の激動期において、幕臣として様々な役割を担いました。京都見廻役としては、京都の治安維持に奔走し、新遊撃隊頭としては、新たな組織の指揮を執りました。坂本龍馬暗殺事件との関与を疑われた際には、潔白を主張し、その疑いを晴らしました。彼の生涯は、幕末維新期の複雑な政治情勢と、それに翻弄された人々の姿を映し出しています。

参考文献
『幕末維新人物事典』（歴史群像編集部編、学研）
松浦玲『勝海舟』（筑摩書房、2010年）

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