藤森弘庵

藤森弘庵（ふじもり こうあん）

藤森弘庵は、寛政11年（1799年）に生まれ、文久2年（1862年）に没した、幕末期の小野藩士、後に土浦藩士として活躍した人物です。名は弘庵、字は淳風、通称は恭助、号は天山、如不及斎と称しました。

生涯

江戸で生まれ育ち、柴野碧海、長野豊山、古賀穀堂、古賀侗庵といった当時の著名な学者に師事し、学問を修めました。故郷の小野藩に戻った後は、父の跡を継いで藩の右筆となり、さらに世子である一柳末延の侍講も務めました。

しかし、藩主の一柳末周に対して時勢に関する建言を行うも受け入れられず、天保5年（1834年）に藩を辞し、江戸で私塾を開きました。その後、久保田藩士の碓井左中の紹介により土浦藩に仕え、藩主の土屋彦直、寅直に朱子学を広めました。天保10年（1839年）には、藩校である郁文館の創立に尽力し、督学として藩士の子弟の教育に当たりました。

天保14年（1843年）には郡奉行に任じられ、主に訴訟事件の解決に尽力。また、藩主寅直の諮問を受け、郡制改革を進言しました。しかし、弘化3年（1846年）に部下の不祥事に連座して郡奉行を辞職。さらに、権力闘争に巻き込まれ、弘化4年（1845年）に藩を辞して再び江戸に戻りました。

江戸では下谷に私塾を開き、嘉永6年（1853年）のペリー来航に際しては『海防備論』を著し、また『芻言』を執筆して水戸藩の徳川斉昭に建白しました。安政4年（1857年）には上洛し、梁川星巌や頼三樹三郎、梅田雲浜、月性ら勤皇思想家と交流。帰府後、勤皇活動に奔走しましたが、安政5年（1858年）に安政の大獄に連座し、江戸で捕えられました。江戸町奉行から水戸降勅についての尋問を受けた後、安政6年（1859年）に追放刑となり、下総国行徳へ移送されました。

文久2年（1862年）に赦免され、江戸の次男光吉邸に移り住みましたが、同年、同地で64歳で亡くなりました。墓所は東京都港区の曹渓寺にあります。

明治24年（1891年）には、その功績が認められ、従四位を追贈されました。

業績

藤森弘庵は、民政や海防に関する著書を数多く残し、また唐宋の文章や漢詩にも優れた才能を発揮しました。著作の一つである『春雨楼詩鈔』は、幕府から出版検閲を受けています。彼の伝記としては、上野日出刀著の『叢書・日本の思想家37．梁川星巌・藤森弘庵』が知られています。

著作

『如不及斎文鈔』
『弘庵先生遺墨帖』
『航湖紀勝』（訳）
『春雨樓詩鈔』
『韓文長藤合評』（評）
『課児詩』（編集）

藤森弘庵は、激動の幕末期において、学問を通じて藩政に貢献し、また日本の将来を憂い、様々な提言を行った人物として、記憶されるべき存在です。

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