尺素往来

尺素往来の概要

『尺素往来』は室町時代後期の一条兼良によって編纂された往来物であり、全2巻から構成されています。この作品の背景には、南北朝時代の僧侶である素眼によって著された『新札往来』が存在し、これを基に増補された形だと考えられています。しかし、文献の詳しい分析によると、表現や文体の違いが明確であり、むしろ『尺素往来』を元にして『新札往来』が作成された可能性が高いとされています。

製作時期の考察

『尺素往来』がいつ書かれたかも研究者によって議論されています。いくつかの歌集に触れた部分があり、その中に新後拾遺和歌集が用いられていることから、永享11年（1439年）には存在しなかった新続古今和歌集には触れていないことが注目されています。このことから、称光天皇の在位期間、すなわち1352年から1371年の間に執筆されたと推測されています。

田村航氏によると、称光天皇期における一条兼良の著作であるという説が支持されています。特に『公事根源』と類似する文献からの引用が含まれている点も、時代背景の推進に寄与しています。

内容の特徴

『尺素往来』は1通の書簡形式であり、年始の儀礼から日常生活に至るまでの68項目について詳しく解説されています。その単語の用例は、当時の公家や武家の文化、生活、教育水準を知る上で非常に重要な資料となっています。このように、本書は日本の歴史や文化を理解するための貴重なソースです。

存在する写本と刊行状況

戦国時代の1522年には、橋本公夏による写本が残されており、内閣文庫に保管されています。江戸時代には複数回の刊行も行われており、書の重要性は時代を超えて引き継がれてきました。これらの写本や刊行物が、後世にわたり文化遺産としての役割を果たしています。

参考文献と研究

『尺素往来』の研究は、多くの学者によって行われ、石川松太郎や嶋田鋭二、田村航などが主要な論考を発表しています。これらの研究を通じて、本書の由来や文化的意義、執筆時の社会状況などが明らかにされてきました。

このような文献は、日本の歴史や文化における重要な一端を担っており、今後の研究の発展が期待されます。古典文学としての評価は高く、多くの人々に親しまれ、今でも学ばれています。

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