尼子氏久

尼子 氏久（あまご うじひさ）について

尼子氏久は、戦国時代から安土桃山時代にかけて活躍した武将であり、尼子氏と織田氏の家臣として知られています。彼の人生には、数々の権力闘争や歴史的な戦いが絡んでおり、特に氏久が家系内での立場の変化や他の武将との関わりによってどのように運命を振り回されていったのかが、歴史的文献に見られます。

概略と家族背景

氏久は尼子誠久の嫡男（長男）であり、通称は助四郎と呼ばれました。『陰徳太平記』という軍記物語によると、氏久は家中随一の武力を誇る新宮党の後継者でした。しかし、祖父である尼子国久が氏久の叔父である敬久を偏愛し、その結果として家督を譲ろうとする動きがあったため、氏久は不満を抱いていました。この状況がきっかけとなり、氏久はその不当な扱いを晴久に訴えました。

この訴えは、尼子晴久に新宮党の抑圧を決意させる触媒となり、天文23年（1554年）には晴久の命令により新宮党が滅ぼされました。ところが、氏久は生き残ることができました。『熊野山物語』によると、新宮党の滅亡の際に、家臣の田中三郎左衛門が幼い氏久を助け、蜂須賀正勝のもとで養育したとされています。

尼子再興の動き

永禄9年（1566年）、毛利元就の攻撃を受けて尼子氏が滅亡することとなります。そして永禄12年（1569年）、誠久の五男である尼子勝久が尼子再興の軍を立ち上げ、出雲国に進出しました。氏久もこれに呼応しましたが、元亀2年（1571年）8月には真山城を毛利氏に奪われ、出雲を退却せざるを得ませんでした。再興軍は因幡国の山名豊国の支援を受けつつ、出雲侵攻を試みる計画を立てました。

また、『太閤記』によると、「尼子助四郎」という名の人物が因幡での戦いで活躍したという記録も存在します。この戦いは、尼子氏の名を高める一因となりましたが、天正4年（1576年）には若桜鬼ヶ城も毛利氏に攻略され、再び撤退を強いられました。

織田信長の命令による戦い

天正5年（1577年）、織田信長の命令によって羽柴秀吉の中国攻めが開始され、氏久と尼子軍は前線に入りました。しかし、天正6年（1578年）に戦況が悪化し、羽柴軍は撤退を余儀なくされたため、氏久は孤立し、上月城を開城しました。その際には、勝久とともに切腹を選ぶこととなりました。この上月城の戦いは、氏久の運命を決定づけた出来事となります。

実像と命名

氏久に関する様々な記録が存在しますが、一次史料では「氏久」という名前自体は確認できない状態です。一方で、佐々木系図によれば、彼は誠久の嫡男で、通称に関しては異なる確認がなされていることがわかります。天文20年（1551年）前後の記録では「同孫四郎」という名が見られ、これはおそらく氏久のことを指していると言われています。

氏久に関する情報が断片的であるため、彼が新宮党の粛清の際にどのような運命を辿ったのか、また勝久の尼子再興軍に参加したかどうかは不明です。殆どの軍記では氏久が上月城で切腹したと報告されていますが、それに関しても疑問が残ります。具体的には、天正六年に記された書状には尼子勝久と、一緒に切腹したのが別の人物であった可能性が示されています。

以上が、尼子氏久の歴史的な背景と彼の運命についての紹介です。氏久の生きざまは、戦国時代の日本の武将たちの複雑な歴史の一部であることを物語っています。

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