尾北古窯跡群

尾北古窯跡群の概要

尾北古窯跡群は、愛知県春日井市、小牧市、犬山市に広がる広範な古窯跡群であり、濃尾平野の北東部、庄内川の北側に位置します。この地域は、古代尾張における重要な陶器生産地として知られており、須恵器やその後に登場する灰釉陶器や緑釉陶器、さらには瓦などの製造が行われていました。

地理と構造

尾北古窯跡群は、小牧市篠岡地域を中心に、犬山市今井や赤坂、春日井市神屋、高蔵寺などに点在しています。これらの窯は丘陵の斜面を利用した半地下式の窯である「窖窯」と呼ばれる形式で、効率的に焼成が行えるように工夫された構造を持っています。

製品の歴史

この地域の陶器生産が始まったのは古墳時代末期から飛鳥時代の7世紀後半で、名古屋市東部で発展した須恵器窯の猿投窯の拡張により、小牧市篠岡地区に新たな窯が設けられました。政府や寺社の影響を受けつつ、須恵器以外にも瓦や硯の生産が盛んに行われ、その製品は地元の古代寺院や奈良県の石神遺跡など、全国各地へ供給されていました。

これにより、尾北古窯は8世紀前半において一時的に猿投窯を上回る生産量を誇り、その後も顕著な発展を見せました。しかし、8世紀半ばには一時的な衰退を迎えました。

瓷器の生産

平安時代に入ると、8世紀末から9世紀初頭にかけて猿投窯で初めて本格的な量産型の灰釉陶器が生産されるようになりました。尾北古窯でも9世紀中頃から須恵器の生産を再開し、後半からは灰釉陶器の製造へと段階的に移行していきました。また、篠岡古窯跡群では緑釉陶器も同時期に生産されました。

10世紀から11世紀にかけては、尾北古窯が最盛期を迎え、これらの製品は東海地方や近畿地方に流通しました。しかし、11世紀末には、周辺の他の灰釉陶器窯同様に無釉の山茶碗に移行し、平安時代末の12世紀には窯の操業が停止されたと考えられています。

結論

尾北古窯跡群は、古代日本における陶器の生産と流通において重要な役割を果たした歴史的な場所であり、その遺跡は日本の陶磁器文化の進化を示す貴重な証拠です。今日でも、その歴史的意義は高く評価され、地域の文化遺産として保存されています。

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