尾崎雅彦

尾崎雅彦：競輪界のプリンス、その光と影

尾崎雅彦は、1958年生まれ、東京都出身の元競輪選手です。父親も競輪選手という環境で育ち、京北高等学校を中退後、日本競輪学校に39期生として入学しました。同期には「ウルフ」の異名を持つ木村一利がいます。1977年に京王閣競輪場でデビューし、同日に初勝利を飾りました。ホームバンクは松戸競輪場でした。

中野浩一との激闘

尾崎のキャリアを語る上で欠かせないのが、当時最強を誇った中野浩一との対戦です。1979年の日本選手権競輪決勝では、中野を徹底マークし、捲りを不発に追い込み、山口健治の優勝をアシストしました。このレースは、中野を力でねじ伏せられる選手はいないと思われていた当時、尾崎の評価を大いに高めました。

1980年には世界選手権スクラッチで銀メダルを獲得。決勝では中野に敗れましたが、その実力は世界レベルであることを証明しました。1981年、1982年の高松宮杯では、予選で3連勝するなど、GIレースの常連となり、競走得点でも常に上位にランクインするなど、競輪界屈指の実力派選手として君臨しました。

タイトルへの渇望とプレッシャー

尾崎は、その実力にもかかわらず、なぜか大きなタイトルには縁がありませんでした。1982年の高松宮杯決勝では、優勝目前で伊藤豊明に交わされ、涙をのみました。しかし、1983年の高松宮杯決勝では、中野浩一を破り、悲願の特別初優勝を成し遂げました。その後も記念レースでは圧倒的な強さを誇り、中野、井上茂徳の最大のライバルと目されることもありました。

しかし、尾崎は「フラワーライン」というグループの絆を重視するあまり、勝負どころで甘さを見せることも少なくありませんでした。1984年の競輪祭決勝では、目標の選手が中野の捲りに対応できず、敗退。1985年のKEIRINグランプリでも、中野の動きに反応し、逆に何もできないという場面が見られました。1992年の高松宮杯決勝でも、滝澤正光に番手を奪われ、優勝を逃しています。結局、尾崎が獲得したGIタイトルは、1983年の高松宮杯のみでした。

惑星と呼ばれた男

尾崎は、プレッシャーに弱い一面もあり、ファンからは「惑星」と呼ばれていました。人気が高い時はあっさり負け、人気がない時に上位に入線するという、車券が買いにくい選手としても有名でした。しかし、その甘いマスクから「輪界のプリンス」とも呼ばれ、多くのファンを魅了しました。

引退とその後

尾崎は、40歳を超えてもS級で活躍し、引退直前までS級2班に在籍していました。引退の理由は、夫人の実家が寺院であったことが縁で、その職を継ぐためでした。2005年12月26日、その輝かしい競輪選手としてのキャリアに終止符を打ちました。

競走スタイルと評価

全盛期の尾崎は、「逃げよし、捲りよし、追い込みよし」という三拍子揃った自在性の脚質を誇っていました。その高い実力から中野浩一と双璧をなす選手と評価されることもありましたが、結果としてGIタイトルは1つに留まりました。縦の脚は非常に強かったものの、横の脚（競り）には不安があり、その点もタイトル獲得を阻む要因となったかもしれません。

尾崎は、競輪界にその名を刻んだ偉大な選手の一人として、今もなおファンの心に生き続けています。

主な獲得タイトル

1983年 - 高松宮杯（大津びわこ競輪場）

関連項目

競輪選手一覧

外部リンク

* 選手通算成績 - KEIRIN.JP

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