井上茂徳

井上茂徳：伝説の「鬼脚」

井上茂徳（いのうえ しげのり）は、1958年3月20日生まれの元競輪選手。佐賀県佐賀市出身で、初代グランドスラマーとしてその名を競輪史に刻みました。現在はスポーツニッポン専属の競輪評論家として活躍しています。

生い立ちと競輪界への道

中学時代は水泳部に所属していましたが、佐賀工業高校から佐賀龍谷高校へ転校後、自転車競技を始めました。競輪選手を目指し、日本競輪学校（現:日本[[競輪選手養成所]]）第39期を受験するも不合格。その後、法政大学に進学しますが、在学中に再度競輪学校第41期を受験し合格。大学を中退し競輪の世界へ飛び込みました。競輪学校での成績は55勝で7位。

1978年4月に選手登録され、同年5月14日の武雄[[競輪場]]でデビュー。同レースで初勝利を飾りました。しかし、新人教育訓練中に同期と騒ぎを起こし、選手会から半年間の出場停止処分を受けました。この期間の反省と練習が、後の活躍に繋がったと本人は語っています。

追い込み選手への転向と大躍進

デビュー当初は先行選手として活躍していましたが、同期の村岡和久や原田則夫の陰に隠れ、目立った活躍はできませんでした。しかし、1981年に追い込み選手（マーク屋）へ転向したことをきっかけに、その才能が開花。同年のオールスター[[競輪]]での優勝を皮切りに、数々の特別競輪（現在のGI）を制覇しました。

1988年6月7日には高松宮杯競輪を制し、競輪史上初の特別競輪全冠制覇（グランドスラム）を達成。この偉業は、中野浩一や吉岡稔真といった名選手も成し遂げられなかったものであり、後世に語り継がれる記録となりました。さらに、KEIRINグランプリも通算3度制覇するなど、その実力は圧倒的でした。

中野浩一との関係

井上は、特別競輪で中野浩一の後ろをマークする機会が多く、その強固な連携は競輪ファンを魅了しました。中野が他の先行選手からの仕掛けをブロックで防ぎ、井上がその後ろからゴールを狙うという展開は、競輪界の黄金パターンの一つでした。しかし、それは中野が最大のライバルを常に背負って走ることを意味し、心理的な負担も大きかったと言われています。

引退とその後

1987年にはレース中の失格による斡旋停止処分を受け、KEIRINグランプリ'87の出場を逃すなど、苦難もありました。1992年の中野浩一引退後は、後継者とされた吉岡稔真をサポートし、九州競輪界を盛り上げました。しかし、1998年1月に落車による右鎖骨骨折の影響でS級1班からの陥落が決まり、1999年の静岡競輪場での日本選手権[[競輪]]を最後に引退。通算成績は1626戦653勝、優勝回数154回、通算獲得賞金は15億6643万4532円に及びます。

引退後は競輪解説者として活躍する傍ら、日本名輪会の会長も務めました。また、ホームバンクであった武雄[[競輪場]]では、彼の功績を称えた「井上茂徳杯」が毎年開催されています。釣り好きとしても知られ、現役時代から釣具店を経営しています。2020年には新型コロナウイルスに感染しましたが、無事回復しました。

「鬼脚」の異名

井上の競走スタイルは、その位置取りのうまさと天才的な勝負勘、最終周回4コーナーを回ってからのダッシュ力の鋭さが特徴で、他選手を震え上がらせるほどの迫力がありました。落車や失格を恐れない激しい競りは、まさに鬼神の如く、「鬼脚」という異名で恐れられました。

競輪漫画「ギャンブルレーサー」にも登場し、主人公のライバルとして描かれています。

主な獲得タイトルと記録

1981年：オールスター[[競輪]]（立川[[競輪場]]）
1982年：競輪祭（小倉[[競輪場]]）
1983年：日本選手権[[競輪]]（前橋[[競輪場]]）
1984年：競輪祭（小倉[[競輪場]]）
1985年：競輪祭（小倉[[競輪場]]）
1986年：全日本選抜競輪（熊本[[競輪場]]）、KEIRINグランプリ'86（立川[[競輪場]]）
1988年：高松宮杯競輪（大津びわこ[[競輪場]]）、KEIRINグランプリ'88（立川[[競輪場]]）
1990年：全日本選抜競輪（青森競輪場）
1993年：高松宮杯競輪（大津びわこ[[競輪場]]）
1994年：KEIRINグランプリ'94（立川[[競輪場]]）
年間賞金王：1982年、1984年

著書

「鬼脚の一筆点評」（週間レース増刊号 競輪コラム篇）


井上茂徳は、その卓越した実力と人間性で、競輪界に大きな足跡を残しました。彼の「鬼脚」は、今もなお多くの競輪ファンを魅了し続けています。

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