屋良朝苗

屋良朝苗（やら ちょうびょう）は、1902年（明治35年）12月13日に沖縄県中頭郡読谷村で生まれ、1997年（平成9年）2月14日に生涯を閉じた政治家であり教育者です。琉球政府の行政主席として沖縄返還を成し遂げ、復帰後は沖縄県知事を2期務めました。

生い立ちと教育者としての歩み

沖縄県師範学校を経て、1930年（昭和5年）に広島高等師範学校（現在の広島大学）を卒業しました。その後は、沖縄県女子師範学校や沖縄県立第一高等女学校、台北第一師範学校、州立台南二中などで教鞭を執りました。台北第一師範学校時代には、後に沖縄開発庁長官となる山中貞則を教え子としています。二人は沖縄返還後、初代県知事と初代沖縄開発庁長官として、水面下で連携し683本もの特例法を成立させました。

行政主席としての活躍

沖縄戦後、沖縄群島政府文教部長や沖縄教職員会長などを歴任。1968年の行政主席選挙では、革新共同候補として立候補し、保守系の西銘順治氏との激しい選挙戦を制し、第5代行政主席に就任しました。この選挙では、日米両政府が西銘氏当選のため裏で動いていたことが後に明らかになりましたが、屋良氏はそれを跳ね返し、見事当選を果たしました。

行政主席在任中は、沖縄返還に向け、日米両政府との粘り強い交渉を続けました。その道のりは困難を極め、苦悩の日々から「縦しわの屋良」と呼ばれるようになりました。復帰前年には、「基地のない平和の島」を求める「建議書」をまとめました。

沖縄県知事として

1972年の沖縄県知事選挙で再選を果たし、1976年まで2期にわたり沖縄県知事を務めました。沖縄返還式典では、一部県民や活動家の反対を押し切り、天皇陛下万歳を三唱したことが物議を醸しました。同年には選挙への出馬を要請されましたが、固辞し退任しました。

知事在任中には、1975年7月17日に糸満市で皇族に対する火炎瓶テロ事件（ひめゆりの塔事件）が発生しました。事前に警備当局が危険性を指摘していたにもかかわらず、屋良氏は「そんなことは絶対にない」として警備を削減しました。また、反天皇制活動家が潜伏していた地下壕の安全確認を主張する警備陣に対し、「『聖域』に土足で入るのは県民感情を逆なでする」として実施を認めませんでした。この事件は、事前の安全確認が行われていれば防げた可能性があったとされています。

知事時代には、植樹祭、沖縄特別国体、沖縄海洋博覧会という「復帰三大事業」を成し遂げました。

知事退任後

知事を退任後も、沖縄の革新陣営のシンボルとして、革新共闘会議を主導し、後継の知事候補として平良幸市氏を応援しました。会談等では自らメモを取るなど、勤勉な人柄がうかがえます。そのメモや日誌は、死後、読谷村に寄贈され、沖縄県公文書館で順次公開されています。

屋良朝苗は、沖縄の激動期を牽引し、県民のために尽力した偉大な指導者として、その功績は長く語り継がれています。

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