山中定次郎

山中定次郎：古美術商として国際的に活躍した生涯

山中定次郎（やまなか さだじろう）は、慶応2年（1866年）に生まれ、昭和11年（1936年）に没した人物です。彼は明治から大正時代にかけて古美術商として活躍し、株式会社山中商会の初代社長を務めました。大阪の美術商である山中家の養子となり、その国際的な事業展開を牽引しました。

生い立ちと山中家へ

山中定次郎は、和泉国堺（現在の堺市）で生まれました。幼少期から家業の見習いを経て、1878年に高麗橋の古美術商、山中吉兵衛に奉公に出されます。その後、大阪商業講習所や英学を学び、海外への関心を抱きます。1889年には山中吉兵衛の長女と結婚し、山中家に入りました。

アメリカへの挑戦

1894年、山中定次郎はアメリカへ派遣され、ニューヨークに店を構えます。彼は現地の商業学校で経営を学びながら、事業を拡大しました。ニューヨーク支店が軌道に乗ると帰国し、1900年には山中商会の理事兼支配人に就任しました。

山中商会の社長として

1917年に山中吉郎兵衛が亡くなった後、1918年に株式会社山中商会を設立し、社長に就任しました。大正時代には、浮世絵の輸出で知られるようになり、フランスの宝石商アンリ・ベーベルのコレクションを松方幸次郎に斡旋するなど、美術界に大きな影響を与えました。

海外への探求

山中定次郎は、1921年と1923年にヨーロッパの支店を視察し、1924年からは中国の石窟や東南アジア、欧米を巡る調査旅行を行いました。これらの経験をもとに、美術に関する知識を深めました。

1931年にはスウェーデン皇太子に美術品を解説するという栄誉に浴しました。

晩年とその後

1936年、山中定次郎は胃潰瘍により自宅で亡くなりました。彼の死後、山中商会は第二次世界大戦の影響を受け、多くの資産を失いました。しかし、彼の築いた基盤は、現在もワタベウェディングの結婚式場「桜鶴苑」としてその一部が残っています。

栄典

山中定次郎は、その功績により、フランス領ベトナムの勲章や緑綬褒章、ドイツ赤十字第二等名誉章など、数々の栄典を授与されました。

1931年（昭和6年）5月6日 フランス領ベトナムドラゴン・ダンナン勲章（大南竜星勲章）シュヴァリエ
1931年（昭和6年）11月 緑綬褒章
1933年（昭和8年）6月23日 ドイツ帝国赤十字第二等名誉章
1936年（昭和11年）11月4日（10月30日付） 従六位
1936年（昭和11年）12月9日 レジオンドヌール勲章

山中家の系譜

山中家は、江戸時代から続く家柄で、定次郎の代で美術商として大きく発展しました。彼の一族は、美術界や実業界で活躍しています。

山中定次郎は、日本の美術を世界に広めた功績者として、その名は今も語り継がれています。

参考文献
朽木ゆり子『ハウス・オブ・ヤマナカ 東洋の至宝を欧米に売った美術商』新潮社、2011年。
* 渡辺源三『山中定次郎翁伝』株式会社山中商会故山中定次郎翁伝編纂会、1939年。

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