山内豊福

山内豊福（やまうち とよよし）：時代の波に翻弄された土佐新田藩主

山内豊福は、江戸時代後期から幕末にかけての土佐新田藩の第5代藩主です。彼は、宗藩である土佐藩と旧幕府勢力との間で板挟みとなり、その短い生涯を閉じました。彼の人生は、幕末という激動の時代を象徴する悲劇的な物語として語り継がれています。

生い立ちと家督相続

豊福は、筑前秋月藩主・黒田長元の次男として誕生しました。後に土佐藩主・山内豊策の五男の血を引くことがわかります。嘉永6年（1853年）、土佐新田藩の第4代藩主・山内豊賢の養子となり、その跡を継ぐことになります。同年、13代将軍徳川家定に謁見し、その存在を公式に認められました。安政3年（1856年）には、養父の隠居により家督を相続し、土佐新田藩の第5代藩主となりました。同年12月には、従五位下・遠江守に叙任されています。

藩政と佐幕派としての立場

豊福は、本家の山内豊信を補佐し、新田藩の軍制を洋式化するなど、軍備増強に尽力しました。彼は急進的な佐幕派でありましたが、武力行使には反対の立場を取り、徳川幕府の存続を強く願っていました。

悲劇的な最期

大政奉還後、鳥羽・伏見の戦いで敗れた徳川慶喜が江戸城に戻ると、豊福は他の大名や旗本と共に登城しました。そこで慶喜は、「山内容堂の勧めで政権を返上したにもかかわらず、逆賊の汚名を着せられ、土佐の策略にはめられた」と述べ、豊福は本藩である土佐藩への批判にさらされることになります。城内では薩長軍との交戦を主張する動きもありましたが、豊福は数日前に容堂から京都へ急行するよう命じられていました。しかし、すでに江戸からの脱出は不可能であり、幕府と本藩の間で板挟みとなった豊福は、自害という道を選びます。

慶応4年（1868年）1月13日（1月14日説も存在します）、豊福は継室である典子と共に自害し、33歳という若さでこの世を去りました。

死後

豊福の家臣たちは、藩主夫妻の死を伏せ、本藩に指示を仰ぎました。5日後、この訃報を聞いた容堂は、豊福の遺言を尊重し、従兄弟である山内豊誠を養子として迎え入れました。その後、藩主夫妻の死は病死として公表され、豊誠が土佐新田藩の家督を継承しました。明治31年（1898年）には、豊福の功績が認められ、従四位が追贈されています。

系譜

父：黒田長元（1811年 - 1867年）
母：慶子 - 慈海院、黒田長韶の娘
正室：松平信庸の娘
継室：典子 - 藤井松平信宝の娘
長女：邦子 - 秋田映季正室 - のち立花寛治継室
次女：豊子 - 藤井松平忠礼継室
* 養子：山内豊誠（1842年 - 1908年） - 山内豊充（山内豊武の次男）の長男



山内豊福は、幕末の動乱期に、その立場ゆえに翻弄され、悲劇的な最期を遂げた藩主として、歴史にその名を刻んでいます。

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