山口剛 (プロデューサー)

山口剛（やまぐち つよし、1937年8月13日 - 2024年11月11日）は、日本のテレビ界で活躍したプロデューサーです。

金沢市に生を受け、幼少期を満洲で過ごした後、愛媛県で育ちました。父が内務省に勤務する公務員だった影響もあり、中学進学以降は東京に居住しました。この頃から映画に深い関心を示し始め、特にランドルフ・スコットやジョエル・マクリーらが主演する西部劇、ジェームズ・キャグニーやジャン・ギャバンらのギャング映画を好んで鑑賞しました。都立杉並高校へ進学すると、その興味は海外ミステリやハードボイルド小説へと広がり、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズなどのジャズ音楽にも傾倒していきました。高校時代には、後にジャズ評論家となる寺島靖国や、フジテレビの相談役を務めた日枝久といった面々が同級生にいました。

早稲田大学第一文学部英文科に進学後、仁賀克雄、小鷹信光らとともにワセダミステリクラブの創設に携わりました。卒業後の1961年、かねてより志望していた日本テレビ放送網に入社し、映画部に配属されます。本業の傍ら、石上三登志らと『推理小説研究会』のような同人活動にも精力的に参加しました。入社後は、外国映画やディズニー作品の日本語吹き替えディレクター、松竹テレビ部の担当などを務め、小坂敬のもとで製作補やアシスタントプロデューサーとして経験を積みました。

1972年、『火曜日の女シリーズ』でテレビドラマのプロデューサーとして一本立ちを果たします。特に1976年に始まった『大都会』シリーズ以降、火曜夜9時枠のドラマ制作をほぼ一貫して担当しました。ここでは、海外ミステリマニアとして培った豊かな素養と、ワセダミステリクラブ時代からの幅広い人脈を最大限に活かし、『探偵物語』、『大激闘マッドポリス'80』、『プロハンター』といった数々の娯楽アクションドラマを世に送り出しました。スタッフ選定にあたっては、「自分が映画を観て面白いと感じた人物を選ぶ」という独自の手法をとっていたと言われています。

火曜夜9時枠が廃止された後も、テレビドラマ制作への情熱は衰えませんでした。『火曜サスペンス劇場』や『水曜グランドロマン』といった新たなドラマ枠の立ち上げに深く関与しました。また、1983年に手掛けた文芸大作『波の盆』は、文化庁芸術祭大賞やATP賞など、主要な賞を総なめにし、高い評価を得ました。

1992年には出版部門へと異動し、主に映画や音楽に関連する書籍の編集に携わりました。1998年に日本テレビを定年退職してからはフリーランスとして活動しました。

ワセダミステリクラブの創設メンバーとしての顔に加え、ミステリ研究家としての一面も持ち合わせていました。2000年に刊行された『海外ミステリー事典』（権田萬治監修、新潮選書）には、ワセダミステリクラブ時代の旧友である仁賀克雄と共に執筆者として名を連ねています。特にミッキー・スピレインについては、「彼に対する初期の厳しい評価の多くは作品自体に即しておらず、今日見ると的を射ていないものが少なくない。現在では逆に評価が高まっている」と、公平かつ的確な視点から論じました。

晩年も精力的に活動を続け、2017年公開の劇場映画『狂覗』では製作総指揮を務めています。

2024年11月11日、東京都内の自宅で87歳で死去しました。

山口剛は、映画やミステリへの深い造詣を背景に、日本のテレビドラマ史にその名を刻んだ、多才なプロデューサーでした。

主なプロデュース作品（一部）：

テレビドラマ:
火曜日の女シリーズ
大都会シリーズ (『大都会 闘いの日々』『大都会 PARTII』『大都会 PARTIII』)
『大追跡』
『探偵物語』
『大激闘マッドポリス'80』
『プロハンター』
火曜サスペンス劇場（多数）
水曜グランドロマン（多数）
西武スペシャル 『波の盆』
『気分は名探偵』
劇場映画:
『俺っちのウエディング』
『狂覗』（製作総指揮）

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