山口幸司 (野球)

山口 幸司

山口 幸司（やまぐち こうじ）は、1970年4月29日に埼玉県浦和市（現在のさいたま市）で生まれた元プロ野球選手です。現役時代は右投右打の外野手として、中日ドラゴンズ一筋でプレーしました。

埼玉県立大宮東高等学校に進学した山口選手は、高校球界でその打棒を轟かせました。高校通算56本塁打を記録し、「超高校級スラッガー」として注目を集めます。しかし、甲子園への道は険しく、2年生時の1987年夏は県大会決勝で鈴木健選手擁する浦和学院高校に大敗。翌1988年夏も準決勝で市立川口高校に敗れ、結局3年間甲子園の土を踏むことは叶いませんでした。大宮東高校の2学年後輩には、後にプロ入りする北川博敏選手がいました。

高校卒業後、山口選手は法政大学への進学を予定していました。しかし、1988年のプロ野球ドラフト会議で中日ドラゴンズから3位指名を受けると、当時の監督である星野仙一氏が翌日には自ら高校を訪問するなど、熱心な説得を受けました。この熱意に心を動かされ、山口選手はプロの世界へ進むことを決意しました。

プロ入り1年目の1989年から、早くも一軍での出場機会を得ます。同年9月9日の対ヤクルトスワローズ戦（ナゴヤ球場）で、彦野利勝選手の代わりとして中堅手として初出場。続く打席では、ヤクルトの川崎憲次郎投手からプロ初安打を放ちました。さらに、翌9月10日の同カードでは「7番・左翼手」として初の先発出場を果たし、9月11日の試合ではヤクルトの岡幸俊投手からプロ初となるソロ本塁打を放ち、初打点も同時に記録するなど、デビュー間もない時期から印象的な活躍を見せました。

1991年には一軍に定着し、主に中堅手として35試合に先発出場しました。高校時代は長距離打者でしたが、プロ入り後は周囲からの助言もあり、持ち前の強肩と俊足を生かした守備・走塁を重視するプレースタイルへと転換しました。レギュラーだった彦野選手が故障で戦線離脱した際には、長嶋清幸選手や南牟礼豊蔵選手といったベテラン選手たちと共に外野の定位置を争いました。

翌1992年も準レギュラーとしてチームに貢献しましたが、その後は成績が伸び悩み、さらに度重なる故障に見舞われたことで出場機会が減少していきます。苦しい時期が続きましたが、1995年には再び調子を上げ、主にチャンスメーカーとして35試合に先発出場し、打率.285という好成績を残すなど、復調の兆しを見せました。

しかし、その後も外野手としてプレーを続けましたが、慢性的な故障なども影響し、レギュラーの座を確固たるものとすることはできませんでした。出場機会は再び減少し、プロ11年目となる1999年は一軍での出場がわずか4試合にとどまり、シーズン終了後に球団から戦力外通告を受けました。残念ながら他球団からの獲得の申し出はなく、この年限りで現役を引退しました。プロ野球選手としての通算成績は、打率.235、本塁打6本、打点34でした。

山口選手の現役時代で特筆すべき出来事として、1991年6月18日にナゴヤ球場で行われた対横浜大洋ホエールズ戦での珍しいプレーがあります。この試合、中日は9回裏に彦野利勝選手が盛田幸妃投手からサヨナラ本塁打を放ちました。しかし、本塁打を打った彦野選手は一塁ベース付近で左膝の靭帯を負傷し、そのまま走塁を続けることができず退場。球審から急遽代走が告げられ、山口選手がその大役を務めました。本塁打を打った選手が走塁不可能となり代走が起用されるというケースは非常に珍しく、プロ野球史上でも2例目という出来事でした。野球規則では、代走者は打者走者に代わって走塁を完了させることが認められています。現在では一塁・三塁のベースコーチや、塁上の代走者はヘルメットを着用することが義務付けられていますが、この時、急に代走を告げられた山口選手はヘルメットではなく、帽子を被ったままベースを一周し、チームのサヨナラ勝利のホームを踏みました。

現役引退後、山口選手はセカンドキャリアとして実業界へ進みました。かつての恩師である星野仙一氏の縁を頼りに、自動車関連の企業に約5年間勤務しました。その後、故郷である埼玉県に戻り、スポーツジムに転職しましたが、運営会社の倒産を経験。困難に直面しながらも、現在はそのスポーツジムの関連企業であった株式会社アイダ設計に勤務しており、新たな道を歩んでいます。

プロ野球選手として、背番号は入団から1994年まで「9」を、1995年からは「00」を着用しました。高校時代の「超高校級スラッガー」から、プロでは俊足強肩の外野手としてプレースタイルを変化させ、中日ドラゴンズの一員として11年間プレーした山口幸司氏の野球人生は、怪我に苦しみながらもチャンスを掴もうと奮闘した軌跡と言えるでしょう。

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