山吉久盛

山吉 久盛（やまよし ひさもり）

室町時代中期の越後国（現在の新潟県）を拠点とした武士で、三条城主を務めた人物です。山吉氏は当時、越後の実質的な支配者であった守護代、長尾邦景に仕える有力な家臣団の一員でした。

その生涯について詳細な記録は多くありませんが、応永年間から文安年間にかけての越後における動乱の中で、その名が史料に確認できます。

応永30年（1423年）、越後国で大きな争乱、「応永の乱」が勃発しました。これは守護と守護代の対立に端を発するもので、長尾邦景は守護方の中条房資らと激しく争うことになります。山吉久盛は、この戦いにおいて邦景を支える中心的な武将の一人として位置づけられていました。三条城という要衝を任されていたことからも、山吉氏が長尾家内で重要な立場にあったことがうかがえます。

この乱の最中、応永31年（1424年）付けの史料に、山吉久盛の名前が初めて現れます。これは、中条氏の分家である金山氏に関する段銭（臨時の課税）の請取状に署名した記録であり、彼がこの頃には既に一定の公的な役割を担っていたことを示しています。

戦いは続き、応永33年（1426年）には、山吉久盛が守る三条城が守護方の攻撃を受けることになります。しかし、久盛は見事に城を守り抜き、敵軍の侵攻を退けました。この三条城防衛の成功は、守護代長尾邦景方の勝利に大きく貢献する一因となったと考えられます。最終的にこの乱は邦景方の勝利に終わり、山吉家もまた、守護代の下での地位や諸権利を維持することができました。

応永の乱が収束した後も、山吉久盛の活動は続きます。文安元年（1444年）には、現在の新潟県三条市にある本成寺（ほんじょうじ）に対して、所領に関する文書である「打渡状（うちわたしじょう）」を発給しています。これは、寺社との関係や、領地経営における山吉氏の権限を示す史料と言えます。

さらに、文安3年（1446年）には、当時の長尾家の当主である長尾実景から本成寺に対して出された遵行状（じゅんぎょうじょう：命令の執行を命じる文書）の宛先として、山吉久盛の名が確認されています。この時期にも、彼が長尾家の家臣として、あるいは三条城主として、地域における執行権を担っていたことがわかります。この文安3年の記録が、現在のところ史料上で山吉久盛の存在が確認できる最も新しい事例となっています。

山吉久盛は、応永の乱という越後を揺るがした戦乱期において、守護代長尾邦景を支え、自身の拠点である三条城を守り抜いた武将でした。その活動は、室町時代中期における越後の政治情勢や、守護代家臣団の動向を知る上で貴重な手がかりを与えてくれます。史料に見える期間はおよそ20年程度ですが、その中で越後の歴史において重要な役割を果たした人物と言えるでしょう。

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