山名時氏

山名時氏の生涯と業績

山名時氏（やまな ときうじ）は、鎌倉時代末期から南北朝時代に活動した武将であり、重要な守護大名として知られています。彼は伯耆国、出雲国、隠岐国、因幡国、若狭国、丹波国、丹後国の守護職を歴任しました。また、足利尊氏・直義兄弟の母である上杉清子とは母方の従姉妹にあたります。

幼少期と家族背景

時氏は嘉元元年（1303年）あるいは永仁6年（1298年）に上野国の新田氏の一族である山名政氏の子として生まれました。彼の家系は鎌倉幕府成立時からの御家人だったため、低い身分ではなかったと考えられています。時氏の家族は上杉氏とも姻戚関係にあり、これが後々の政治的な動きに影響を与えました。

武将としての活動

時氏は、鎌倉幕府の政争が激化する中で力を蓄えました。彼は新田一族の惣領である新田義貞に従わず、逆に足利尊氏の側近として活動しました。延元2年（1337年）には名和氏の拠点である伯耆国の守護に任命され、その後も南朝との戦いで多くの戦功を上げ、丹後、出雲、隠岐守護となりました。

のち、観応の擾乱が発生し、時氏は当初は足利直義を支持していましたが、のちに彼に従い、武士としての立場を強化していきます。正平2年（1347年）に楠木正行との戦いで敗北したものの、翌年には若狭守護にも任命されました。

幕府との関係とクーデター

時氏は1350年代において、室町幕府の権力争いに深く関与しました。彼は一時的に直義派の側に付きましたが、その後南朝に従うことになります。特に正平7年（1352年）には直義の死後、一時的に将軍派に転身し、出雲、若狭守護職を巡る佐々木道誉との対立が続きました。彼は出雲での戦闘を経て、ついには足利義詮を追って京都を占領することにも成功しましたが、その後の反撃によって撤退を余儀なくされました。

帰順と影響力の拡大

時氏は1363年に、南朝との敵対関係を経て、大内氏に帰順し、後の影響力を保持しました。彼は5か国の守護に任命され、さらには引付頭人にも選ばれ、幕府の政界において重要な位置を占めることとなります。彼の息子たちもその後の影響力を増し、時氏の死後も山名氏は山陰地方での地位を確立していきました。

晩年と死

時氏は建徳2年（1371年）に死去し、享年69歳でした。伯耆の光孝寺に埋葬されることとなり、嫡男である師義が彼の後を継ぎました。時氏の生涯は、彼が守護大名としての地位を確立し、南北両朝や多くの敵対勢力との抗争を経て、いかに自己の勢力を強化したかを示しています。彼の活動は山名氏の影響力を増幅させ、後には同族間の争いの火種ともなりました。

人物像と逸話

時氏はその生涯において、幕府に反感を持たれながらも広大な所領を持ち続けたため、当時の人々からは皮肉も含めた噂を立てられました。また、『難太平記』には彼が自らの経験を子供たちに語り、常に警戒心を持つように心配したという逸話が残されています。これは、後に山名氏が明徳の乱において将軍家から追討されることになる予兆とも言えるでしょう。

時氏が築いた基盤は、彼の死後も続く影響力を生み出しましたが、その後の同族争いを引き起こすことになる要因ともなりました。彼の人生は、戦国時代の武将たちの複雑な人間関係や政治的ダイナミクスを物語る一つの証です。

もう一度検索