山崎升

山崎升（やまざき のぼる）

山崎升は、1921年3月31日に東京で生まれた日本の化学者であり、高分子工学の分野で卓越した業績を上げました。東京工業大学名誉教授であり、工学博士の学位を持っています。

人物

山崎博士は、30年以上にわたり、ゴムおよび関連高分子材料の合成と応用に関する幅広い研究に取り組みました。特に、イオン重合反応や高エネルギー化合物を用いた重縮合反応による新たなポリマー生成の実現に貢献しました。研究領域は、電解開始イオン重合反応、高エネルギー化合物を用いる重縮合反応、ゴムの硫黄加硫反応、分子複合材料、有機・無機複合高分子材料、免震用弾性構造材料など多岐にわたります。

教育者としての活動に加え、研究面においてもゴムの科学と技術の進歩に大きく貢献しました。また、多くの関係学会で重要な役割を果たし、国際交流にも熱心に取り組みました。国際的なゴム技術組織に長年参加し、日本代表として先駆的な役割を担い、高分子科学関連学会や産業の発展に尽力しました。

科学的業績および社会的貢献

山崎博士は、電解開始イオン重合反応や高エネルギー化合物を用いる重縮合反応による新たな重合体生成方法を発見しました。また、ゴムの加硫反応に関する新しい知見を得るなど、数多くの業績を上げています。特に、ゴム化学の基礎と応用に関する研究の発展過程で見出した、新規な高分子合成法や機能性材料の開発は、注目を集めました。これらの研究成果は、140編を超える論文、多くの総説や著書に詳しくまとめられ、国内外で高く評価されています。また、30件の日本および海外での特許権を取得し、約200件の研究発表を行いました。

主な業績としては以下のものが挙げられます。

重縮合分野: チグラー触媒によるイソプレンの重合、ジエン-オレフィンおよびオレフィン-極性ビニルモノマーの共重合、アルキル亜リン酸を触媒とするジカルボン酸や炭酸ガスとジアミンからの高分子量ポリアミドやポリ尿素の合成。
ゴムの加硫反応および環状ポリスルフィド類合成分野: ゴムの加硫反応に関する新しい知見、環状ポリスルフィド類の合成と応用、リン酸エステルによるスチレン誘導体の選択的共二量化反応。

学術研究に加え、専門学会や協会などの社会的活動にも多大な貢献をしました。特に、高分子学会および日本ゴム協会での活動は重要であり、日本ゴム協会では副会長（1975年～1981年）を経て、1985年に会長に就任しました。高分子学会では副会長（1980年～1982年）を務め、理事（1972年～1984年）および評議員（1984年以降）を歴任しました。

国際交流にも熱心であり、長年にわたり国際ゴム技術組織の日本代表として活躍しました。1977年にアメリカで開催された第1回日米エラストマー会議では、共同議長を務めました。長年にわたり国際ゴム技術会議（IRC）の日本代表委員を務め、1985年～1986年には議長に就任しました。また、1985年に京都で開催された国際ゴム技術会議（IRC 85 Kyoto）では組織委員長を務めました。

社会的活動

山崎博士は、以下の団体で要職を歴任しました。

日本ゴム協会会長（1985年-1986年）、副会長（1975年-1981年）。同協会名誉会員。
高分子学会副会長（1980年-1982年）。同会評議員。
国際ゴム技術会議（IRC）議長（1985年-1986年）、日本代表委員（1970年-1985年）。
日本免震構造協会評議員（1995年-）。
学術文献普及会理事長（1999年-2005年）、現名誉理事長。

その他、日本化学会、アメリカ化学会（ACS）の会員としても活動しました。アメリカ化学会では、高分子部会およびゴム部会に所属し、国際委員会委員を約10年間務めました。

顕彰

山崎博士は、その業績に対し、以下の賞を受賞しました。

1982年：高分子学会より高分子科学功績賞
1990年：日本化学会と日本ゴム協会との共同の賞であるオーエンスレーガー賞
1998年：国際ゴム技術会議機構（IRCO）よりIRCOメダル（日本人初）

趣味

山崎博士は、野球、ゴルフ、テニス、サッカーなど多岐にわたるスポーツを楽しみました。60歳からはヨーガを日課としています。読書は歴史や美術を好み、国内外の旅行や人々との対話を大切にしています。また、建築設計にも関心を持ち、免震建築用構造材料の研究グループにも所属しています。

系譜・家族

祖父は日本鋳鋼所創設者の山崎久太郎、父は理学博士で山梨高等工業学校初代校長の山崎甚五郎です。妻は佐鳥電機創設者佐鳥仁左の娘、佐鳥信子です。

年譜

1921年：東京市赤坂区で誕生。
1927年：父、甚五郎が病死。
1930年：母、隆が死去。
1933年：東京高等師範学校附属小学校卒業。
1938年：東京高等師範学校附属中学校卒業。
1942年：静岡高等学校卒業、東京工業大学入学。
1942年：祖父、山崎久太郎が死去。
1945年：東京工業大学応用化学科卒業、同大学院へ進学。
1946年：東京工業大学工学部応用化学科助手に任命。
1948年：佐鳥信子と結婚。
1952年：配位触媒によるオレフィンおよびジエン類の重合反応に参加。
1958年：チーグラー・ナッタ触媒によるシス-1,4-ポリイソプレンの合成に成功。
1961年：東京工業大学より工学博士の学位を授与。
1965年：東京工業大学の工学部高分子工学科助教授に任命。
1976年：東京工業大学教授に任命。
1981年：東京工業大学を停年退官、神奈川歯科大学教授に就任。
1982年：高分子学会より高分子科学功績賞を受賞。
1985年：日本ゴム協会会長に就任、国際ゴム技術会議（IRC 85 Kyoto）組織委員長。
1988年：神奈川歯科大学を停年退職。
1990年：オーエンスレーガー賞を受賞。
1998年：国際ゴム技術会議機構（IRCO）よりIRCOメダルを受賞。
1999年：学術文献普及会理事長に就任。

山崎升博士は、高分子化学の分野において、基礎研究から応用研究、そして国際交流まで、多岐にわたる分野で顕著な業績を上げ、日本の科学技術の発展に大きく貢献した人物です。

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