山崎宗鑑

山崎宗鑑（やまざき そうかん）は、戦国時代の連歌師、そして俳諧作者として知られています。寛正6年（1465年）頃に近江国（現在の滋賀県）で生まれたとされ、天文23年（1554年）に生涯を閉じたとされています。彼の人生は、貴族的な連歌の世界から、より自由で民衆的な俳諧の世界へと足を踏み入れた、革新的なものでした。

生涯

宗鑑は近江国栗太郡志那村（現在の草津市志那町）で、佐々木氏の末裔として生まれました。幼少の頃より室町幕府9代将軍足利義尚に仕え、側近や祐筆として活躍したと伝えられています。また、一休禅師とも親交があり、共に志那を訪れたこともあったそうです。義尚が鈎の陣で亡くなった後、世の無常を感じた宗鑑は出家しました。

出家後、宗鑑は摂津国尼崎や山城国薪村に隠棲し、その後、淀川のほとり、山城国（または摂津国）の山崎に庵「對月庵」を結びました。この地で「山崎宗鑑」と名乗るようになったとされています。現在、大阪府島本町山崎には、「宗鑑井戸」や「宗鑑旧居跡」が残されています。大永3年（1523年）頃に山崎を離れた宗鑑は、享禄元年（1528年）に讃岐国（香川県観音寺市）の興昌寺に庵「一夜庵」を構え、そこで生涯を終えました。「一夜庵」という名前は、宗鑑が長居を嫌い、宿泊を一夜限りとしたことに由来すると言われています。この庵は修復を重ねながらも現在も残っており、興昌寺の背後の山中には宗鑑の墓址も存在します。

連歌から俳諧へ

宗鑑は当初、連歌師を目指し、宗祇や宗長といった当時の著名な連歌師たちと交流していました。しかし、貴族的で伝統を重んじる連歌の世界は、滑稽な機知を好み、天性の洒落気を持つ宗鑑には合わず、より自由な俳諧の世界へと進むことになりました。当時の俳諧はまだ連歌の余興として扱われており、独立した芸術とは見なされていませんでした。保守的な連歌師たちは宗鑑の作風を「卑俗で滑稽だ」と批判しましたが、宗鑑はそれに反発し、「かしましや 此の里過ぎよ 時鳥 都のうつけ 如何に聞くらむ」という句で逆に彼らをあざけりました。そして、民衆的な色彩の中に自己の道を見出し、座興として扱われていた俳諧を丹念に記録・整理し、俳諧撰集の草分けである「新撰犬筑波集」を編纂しました。この撰集によって、俳諧は独立した芸術として世間に認められるようになりました。「犬筑波集」の自由奔放で滑稽な句風は、江戸時代初期の談林俳諧に大きな影響を与え、宗鑑は荒木田守武とともに、俳諧の祖と称されています。

人となり

宗鑑は、そのユーモアあふれる人柄を示すエピソードを数多く残しています。庵「一夜庵」の入口には、「上の客は立ち帰り、中の客は日帰り、泊まりの客は下の下」と記した立て看板を立てていたと言われています。また、庵の調度品は薬缶一つだけという質素な生活を送っていました。宗鑑は書家としても知られ、「宗鑑流」と呼ばれる独特の書風を確立しました。その書風は、尊円流の素眼である尭孝の流れを汲み、時に粗略と思われるほど荒削りで自由奔放な筆運びが特徴です。彼は筆耕を生活の糧としていた時期もありました。

宗鑑は、天文23年（1554年）に「ヨウ（できもの）」を患い、一夜庵で亡くなりました。辞世の句は「宗鑑は いづくへと人の 問うならば ちとよう（ヨウ）がありて あの世へといへ」です。この句からも、宗鑑のユーモラスで飄々とした人柄が偲ばれます。

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