宗長

宗長（そうちょう）

宗長は、室町時代後期に活躍した連歌師で、文安5年（1448年）に駿河国島田郷（現在の静岡県島田市）で生まれ、天文元年（1532年）に85歳で亡くなりました。号は柴屋軒。

生涯

宗長の出自については諸説ありますが、自身は「つたなき下職のものゝ子」と語っています。幼少の頃から今川義忠に仕え、18歳の時に建穂寺で出家し、弘済と号しました。その後、連歌師の宗祇と出会い、連歌の道に進みます。

応仁の乱では義忠に従って上洛し、後に宗祇に師事して連歌を学びました。宗祇の指導のもと、水無瀬三吟百韻や湯山三吟百韻などの連歌会に参加し、才能を開花させます。また、大徳寺の一休宗純に参禅し、その傍らに住むなど、禅の道にも深く関わりました。

宗祇没後は、連歌界の指導者として活躍しましたが、宗祇の草庵は宗碩に譲り、自身は駿河に留まりました。京都に移らなかった理由としては、戦乱や、故郷駿河での今川氏の庇護があったこと、また、古今伝授への関心が低かったことが挙げられます。

宗長は、武将や公家との交流も広く、三条西実隆、細川高国、大内義興、上杉房能らと親交がありました。特に今川氏の外交顧問としても活動し、斯波氏、武田氏、上杉氏との戦いに深く関わりました。

永正元年（1504年）には、斎藤安元の援助により柴屋軒を結び、京都との間を往還しながら大徳寺の山門造営にも関与しました。また、下野国にも足を運び、鹿沼の館で連歌会を開きました。

大永6年（1526年）には、大徳寺山門の落成を機に再び上洛しますが、京都の戦乱により駿河へ帰国を余儀なくされます。その後は柴屋軒に引退し、静かな晩年を送りました。

業績

宗長の代表作には、句集「那智篭」、日記「宗長手記」「宗長日記」などがあります。また、「東路の津登」「宇津山記」「宗祇終焉記」といった紀行文も残しており、当時の文化や社会情勢を知る上で貴重な資料となっています。

宗長は、「急がば回れ」を唱えた人物としても知られています。その言葉は、焦らずに遠回りすることが、結果として目的を達成する近道になるという教訓を伝えています。

人物像

宗長は、連歌師としての才能だけでなく、外交官としても優れた能力を発揮しました。また、禅の思想にも深く傾倒し、その精神は作品にも表れています。戦乱の時代を生き抜いた宗長の生き方は、多くの人々に感銘を与え、その名は後世にまで語り継がれています。

主な著作

句集：「那智篭（なちごもり）」
日記：「宗長手記」、「宗長日記」
紀行文：「東路の津登（あづまじのつと）」、「宇津山記」、「宗祇終焉記」

著作刊行物

『水無瀬三吟百韻』宗祇, 肖柏, 宗長著 日本古典文学刊行会 1974
『宗長駿河日記 林家本』鵜沢覚編 古典文庫 1975
『宗長日記』島津忠夫校注 岩波文庫 1975
『老耳 宗長第三句集』重松裕巳編 古典文庫 1976
『那智籠 宗長第二句集』重松裕巳編 古典文庫 1977
『壁草 大阪天満宮文庫本』重松裕巳編 古典文庫 1979
『宗長作品集 日記・紀行』重松裕巳編 古典文庫 1983
『宗長秘歌抄』臨川書店 京都大学国語国文資料叢書 1983
『宗長作品集 連歌学書編』重松裕巳編 古典文庫 1990
『中世日記紀行文学全評釈集成 第7巻』「宗長日記」岸田依子 勉誠出版 2004

参考文献

市原市教育委員会 編『市原市史』 中巻、市原市、1986年3月20日。
大塚勲 編『島田市立図書館叢書』 第十九集《連歌師宗長年譜》、島田市立図書館、1987年。
勢田勝郭『連歌の新研究 論考編』桜楓社 1992
鶴崎裕雄『戦国を往く連歌師宗長』角川叢書 2000
黒田基樹 編『シリーズ・中世関東武士の研究 第二六巻 今川氏親』戎光祥出版、2019年4月

英訳

Song in an Age of Discord : ’The Journal of Socho’ and Poetic Life in Late Medieval Japan H. Mack Horton.Stanford University Press, c2002.
The Journal of Socho translated and annotated by H. Mack Horton.Stanford University Press, c2002.

もう一度検索