新撰犬筑波集

『新撰犬筑波集』（しんせんいぬつくばしゅう）は、室町時代後期に成立した俳諧連歌撰集であり、撰者は山崎宗鑑です。成立は1524年以降とされており、宗鑑による編纂の後、後世に次々と増補が加えられたと考えられています。そのため、収録内容が異なる異本が多数存在するのが特徴です。

俳諧連歌集としては、『竹馬狂吟集』に次ぐ初期の撰集であり、近世以降、特に俳諧連歌集の祖として広く知られるようになりました。江戸時代初期の談林俳諧にも影響を与えたとされています。

慶長・元和の頃の刊本では『犬筑波集』と表記されていますが、写本では『俳諧連歌』や『俳諧連歌抄』と呼ばれることもありました。『犬筑波集』という名称は、当初からのものではなかったようです。「犬」という字は、連歌に対する俳諧連歌の卑称であり、『犬筑波集』は連歌集である『新撰菟玖波集』に対する表現として用いられました。

収録されている俳諧連歌は、「付句」と「発句」から構成されています。「付句」は四季に分類され、「発句」は四季・恋・雑に分類されています。内容としては、卑俗な滑稽を狙い、卑猥な表現を直接的に歌っている点が特徴的です。これは連歌に対する反意や批判の意図を示すものと解釈されています。

『新撰犬筑波集』は、俳諧の歴史において重要な位置を占める作品であり、研究や読解のため、さまざまな形で現代に伝えられています。鈴木棠三による校訂・注釈本は角川文庫『犬つくば集』に収録されており、国立国会図書館のデジタルコレクションでも閲覧可能です。また、新潮社の新潮古典集成『竹馬狂吟集 新撰犬筑波集』には、木村三四吾と井口壽が校訂し現代語訳を含む注解を付したものが収録されています。これらの書籍を通じて、より深く作品を理解することができます。

『新撰犬筑波集』は、その独特の表現や連歌への批判精神を通じて、当時の社会や文化を映し出す貴重な資料であり、俳諧文学の変遷を辿る上で欠かせない作品の一つです。

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