山崎辨榮

山崎弁栄の生涯と光明主義運動

山崎弁栄（やまざき べんねい、1859年2月20日 - 1920年12月4日）は、日本の浄土宗の僧侶であり、明治時代後期から大正時代にかけて、浄土宗の社会運動である光明主義運動を主導した人物です。また、光明学園の創設者としても知られています。

生い立ちと出家

安政6年（1859年）、下総国相馬郡手賀沼畔の鷲野谷村（現在の千葉県柏市鷲野谷周辺）で、熱心な浄土宗の農家の家庭に生まれました。幼少期には近所の真言宗寺院で仏画を習い、12歳の時に阿弥陀三尊を夕日の中で観想したことがきっかけで出家を志しました。明治12年（1879年）11月、佛法山一乘院東漸寺の大谷大康に師事し、出家を果たしました。

修学と修行

明治14年（1881年）に上京し、増上寺や駒込吉祥寺学林（現在の駒澤大学）で仏教の研鑽を積みました。明治15年（1882年）には筑波山中で念仏修行を行い、その後の活動の基礎を築きました。明治18年（1887年）には習志野に移住し、靈鷲山源福院善光寺の建立や浄土宗本校（現在の大正大学）設立のための勧進活動に尽力しました。

インド仏跡巡拝と光明主義運動

明治27年（1894年）にはインド仏跡巡拝に出かけ、翌28年に帰国。その後、社会変革を目指す光明主義運動を開始しました。大正3年（1914年）には如来光明会（現在の一般財団法人光明会）を設立し、社会福祉活動や仏教思想の普及に努めました。

教育活動と晩年

大正5年（1916年）には、総本山知恩院の夏安居に講師として招かれ、大正7年（1918年）には時宗当麻派の本山である無量光寺の61世法主に迎えられました。さらに、人々の教育のために光明学園を境内に創設しました。大正9年12月、各地を巡錫中に柏崎市の寶篋山安養院極楽寺で生涯を閉じました。

弁栄の人物像と逸話

音楽を通じた布教

山崎弁栄は、西洋楽器を積極的に布教に活用したことでも知られています。明治23年（1890年）頃には、仏教の教えを広めるために賛仏歌を作詞作曲し、当時珍しかった手風琴を自ら演奏しながら全国を行脚しました。音楽を通じて人々に仏教を親しみやすく伝えるという、革新的な布教活動を展開しました。

超能力めいた逸話

弁栄には、超能力めいた逸話も残されています。渡し舟に乗っていた際、対岸のある場所を指して「あそこに14歳くらいの娘が溺死しているが、堤防の下の石に引っかかって浮かび上がらない。水練の心得がある人がいたら、子どもを救出して親を安心させてあげてほしい」と言ったところ、実際にその通りであったという話が伝わっています。また、人の心を読んだという逸話も残っています。

弟子たち

山崎弁栄の教えを受け継いだ弟子には、田中木叉、笹本戒浄、大谷仙界、藤本浄本などがいます。彼らは弁栄の思想を継承し、その活動を支えました。

山崎弁栄記念館

2013年（平成24年）8月には、岐阜市に一般財団法人山崎弁栄記念館が開館しました。記念館には、弁栄の遺墨作品をはじめ、自筆の原稿、著作などが一般公開されています。初代理事長は河波昌、初代館長は若松英輔が務めました。

記念館情報

所在地：岐阜市長良泉町16 山本ビル1階
開館日：特別展会期中を除き平日のみ（要予約）

著作

山崎弁栄は、多くの著作を残しました。代表的なものとして、以下のものがあります。

遺稿集『ミオヤの光 - 弁栄聖者御遺稿』（全6冊、ミオヤのひかり社、1922年）
『弁栄聖者道詠集』（ミオヤのひかり社、1926年→1984年）
『弁栄上人遺墨集』（ミオヤのひかり社、1926年）
『弁栄聖者光明大系無辺光』（ミオヤのひかり社、1928年）
『弁栄聖者光明大系不断光』（ミオヤのひかり社、1928年）
『弁栄聖者光明大系無量光寿』（ミオヤのひかり社、1930年）
『弁栄聖者光明大系無礙光』（田中木叉編、ミオヤのひかり社、1956年）
『弁栄聖者光明大系無対光』（田中木叉編、ミオヤのひかり社、1957年）
『弁栄聖者光明大系炎王光』（田中木叉編、ミオヤのひかり社、1959年）
『弁栄聖者光明大系清浄光・歓喜光・智慧光・不断光』（田中木叉編、ミオヤのひかり社、1959年）
『自覚の曙光 - 仏陀禅那弁栄聖者御遺文』（光明会本部聖堂、1964年）
『宗祖の皮髄 - 仏陀禅那弁栄聖者御遺文』（光明会本部聖堂、1965年）
『無辺光 - 弁栄聖者光明大系』（講談社、1969年）
『阿弥陀経図会 - 仏陀禅那弁栄聖者御遺文』（光明会本部聖堂、1974年）
『十六観相 - 仏陀禅那弁栄聖者御遺文』（光明会本部聖堂、1975年）
『如来光明礼拜儀』（光明修養会、1995年）

新版刊行

『法然上人の神髄　現代語訳「山崎弁栄講述－『宗祖の皮髄』」』（谷慈義訳注／河波定昌監訳、眞人堂、2016年4月）
『人生の帰趣』（岩波文庫、2018年4月）。解題大南龍昇、解説若松英輔
『山崎弁栄 光明主義講話 - 大悲のことば』（中井常次郎（弁常居士）記、求龍堂選書、2020年3月）

関連文献

山崎弁栄に関する研究書や伝記も多数出版されています。

山本幹夫『辨榮聖者の人格と宗教』（大東出版社、1937年）
藤堂恭俊『弁栄聖者』（光明会連合本部、1959年）
田中木叉『日本の光 - 弁栄上人伝』（光明修養会、1997年）
佐々木有一『山崎弁栄 - 弥陀合一の念仏』（春秋社、2019年）
若松英輔「第1章 光の顕現―山崎弁栄の霊性」-『霊性の哲学』（角川選書、2015年）

山崎弁栄の思想と影響

山崎弁栄は、浄土宗の教えを基盤としながらも、社会の変革を目指した光明主義運動を提唱し、多くの人々に影響を与えました。彼の思想は、現代においても多くの人々に学びと気づきを与え続けています。

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