山本力蔵

山本力蔵（やまもと りきぞう）

生涯

前半生

1907年（明治40年）、千葉県旭町（現在の旭市）で醤油醸造業を営む「飯田本店」の四男として生まれました。幼名は広造、後に實と改名します。1925年（大正14年）に千葉県立成東中学校（現在の成東高校）を卒業後、大阪の綿花商である戸部商店で奉公しました。1927年（昭和2年）には、小見川町（現在の香取市）で醤油醸造業を営む大村屋の婿養子となり、本格的に醤油醸造の世界へ足を踏み入れました。木下浅吉に師事し醸造技術を深く研究し、1939年（昭和14年）には中国へ渡り技術指導を行いました。1940年（昭和15年）には済南市で株式会社魯興醸造廠を設立し、醤油・味噌の製造を開始。1943年（昭和18年）には済南市内の醤油醸造会社を統合し、山東醤油味噌統合株式会社の社長に就任するなど、事業家として精力的に活動しました。

小見川町長

第二次世界大戦後、中国から引き揚げ、1946年（昭和21年）に二代目山本力蔵を襲名しました。翌1947年、39歳で小見川町長に就任しました。19年に及ぶ町長在任中には、小見川町営野球場へのプロ野球試合誘致（巨人対国鉄戦、金田正一も出場）、小見川大橋の開通、工業団地の造成、国保小見川中央病院の設立、利根川の治水対策など、数々の実績を上げました。住民の視点に立った町政を心がけ、人との繋がりや恩義を大切にしたといわれています。1954年（昭和29年）には千葉県町村会長、後に全国町村会長に就任しました。

新東京空港公団理事・副総裁

1966年（昭和41年）8月16日、自由民主党副総裁の川島正次郎の要請により、新東京国際空港公団の理事に地元代表として就任しました。三里塚闘争が激化する中、地域住民との対話を重ね、成田空港問題の解決に尽力しました。公団からの報酬は全て部下の慰労に使っていたそうです。1967年（昭和42年）10月、空港公団総裁の辞任を受け、副総裁であった今井栄文が総裁に昇格。その後任として、地方自治のベテランであった山本に白羽の矢が立ちました。山本は当初、官僚社会での孤立を懸念し辞退しましたが、川島の説得により同年11月4日に空港公団副総裁に就任しました。1974年7月に副総裁を退任し、公団顧問となりました。

死去

1983年（昭和58年）に逝去。同年11月10日には小見川町による町葬が執り行われ、当時の内閣総理大臣中曽根康弘から弔辞が送られました。

エピソード

空港公団理事として地元と協議する際には、「反対」という言葉を使わず、「まだ賛成いただけない方」と呼ぶように心がけていたといいます。また、千葉県知事に対して、「遠い親戚が反対派農民の中にいるため、代替地の話をすることが難しい」と苦悩を吐露しました。また、空港建設のために、私有地を売却し、その資金を用地買収費に充てていたこともあったそうです。この件を知った山村新次郎が真偽を確かめた際、山本は「この件は誰にも言わないでほしい」と口止めをしました。この話を聞いた二階堂進は感銘を受け、官房長官名義でスイス製の懐中時計を贈呈しました。

栄典

勲三等旭日中綬章を受章し、死後従四位を追贈されました。小見川町名誉町民となり、1993年（平成5年）には小見川町役場（現在の香取市小見川支所）内に顕彰碑が建立されました。

参考文献

* 山本力蔵氏を顕彰する会実行委員会 編『山本力蔵先生を偲ぶ』1993年5月。

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