山本泰照 (競艇選手)

山本泰照：不屈の精神で頂点を極めた名レーサー

山本泰照は、1941年8月27日に岡山県で生まれました。1964年に競艇選手としてデビューし、16期生として田中理と同期でした。彼のレーススタイルは、鋭いターンと果敢な攻めが特徴で、多くのファンを魅了しました。また、その温厚な人柄で多くの選手仲間からも慕われていました。

1977年、下関競艇場で開催された第12回鳳凰賞競走での優勝は、彼のキャリアにおけるハイライトと言えるでしょう。このレースでは、スタートで飛び出した中道善博選手に小林嗣政選手が接触し、2マークで古賀武日児選手と中道選手が激しく競り合う展開となりました。その隙を突き、山本選手は鮮やかな差しを決め、見事優勝を果たしました。この優勝は、彼にとって唯一の四大特別競走制覇であり、手にした800万円の優勝賞金は、当時としては破格の大金でした。

優勝後、山本選手は、同僚の武田章選手に「皆の弁当代と酒代を出さない。警護して帰ってやるから」と言われ、帰りの新幹線では、3人掛けシートを向かい合わせにして囲まれるように座り、万谷章選手と林通選手に自宅まで送ってもらったというエピソードが残っています。自宅に着くと、今度は大金をどこに隠すかで悩みましたが、結局、箪笥の後ろに100万円ずつの束を隠し、翌日銀行に預けたそうです。

鳳凰賞の優勝後、工具箱を開けると、普段使わないホット系の9番プラグが入っていました。伸び型の10番プラグと間違えて購入し、北原友次選手から「新品のプラグに換えて焼いておけ」と言われたときに使ったものでした。このプラグが、彼の強烈なターンを生み出した要因だったようです。

翌年の第13回鳳凰賞競走でも優出したものの、北原友次選手の「グランドスラム」達成を許し、5着に終わりました。その後も、鳳凰賞やダービーには常連として出場する活躍を見せましたが、怪我の影響で思うような成績を残せなくなってきました。1997年9月15日の津競艇場での一般戦が最後の優出となり、5着でレースを終えました。

1998年11月3日、丸亀競艇場での一般戦で通算2000勝を達成し、これを機に引退を決意。引退のことは夫人だけに告げ、誰にも告げずにレースを続けました。そして、同年11月15日の三国競艇場での一般戦で最後の勝利となる2001勝目を挙げ、選手生活に幕を下ろしました。

引退シリーズとなった桐生競艇場での年末開催では、競技委員長に引退することを伝え、最終日には参加していた選手たちから餞別が送られました。家族も桐生まで駆けつけ、彼の最後のレースを見守りました。

引退後は、JLC専属解説者として活躍し、その熱心で分かりやすい解説は多くのファンに好評です。2007年には、ボートレース殿堂マイスター入りを果たし、その功績が讃えられました。

山本泰照は、その卓越した技術と不屈の精神で、多くの人々に感動を与えた名レーサーとして、今もなお語り継がれています。

獲得タイトル

* 1977年 - 第12回鳳凰賞競走（下関競艇場）

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