山本洋祐

山本洋祐：苦難を乗り越え世界を制した柔道家

山本洋祐（やまもと ようすけ）は、1960年6月22日生まれの日本の柔道家です。1987年の世界柔道選手権大会で金メダル、1988年のソウルオリンピックで銅メダルを獲得。現在は日本体育大学スポーツ文化学部武道教育学科の教授として、柔道界の発展に貢献しています。

幼少期から柔道との出会い

熊本県熊本市南区出身の山本は、小学校5年生の時に兄の影響で柔道を始めました。中学校に入学すると本格的に稽古に打ち込み、県立宇土高校に進学。高校3年生の時には、全日本新人体重別選手権大会で準優勝という好成績を収めました。

大学時代：怪我との闘い

1979年、日本体育大学に入学した山本は、講道館杯で3位入賞、全日本新人体重別選手権大会で優勝するなど、着実に実績を重ねていきました。しかし、大学2年時に出場した世界学生選手権大会で、得意の背負投を仕掛けた際に肘を負傷。靭帯断裂という大怪我に見舞われました。

怪我の後遺症により、得意の背負投をかけることができなくなった山本は、苦悩の日々を送ります。しかし、彼は諦めませんでした。掬投や小内刈からの巴投といった新たな技を習得し、大学4年次には全日本学生選手権大会で再び優勝。怪我を乗り越え、学生王者として返り咲きました。

世界へ：努力の先に掴んだ栄光

大学卒業後、日本体育大学の研究員や山梨県立日川高校の教員を経て、再び日本体育大学の研究員となった山本は、競技に専念する道を選びます。24歳頃から全日本の強化合宿に参加するようになりますが、当時、同じ階級にはロサンゼルス五輪金メダリストの松岡義之がおり、長らく2番手の立場を余儀なくされました。

それでも山本は諦めず、高校時代の同級生からテーピングという施術を教えてもらい、左肘の不安を解消。また、減量方法も改善し、万全の状態で試合に臨めるように工夫しました。そして1986年、講道館杯、全日本選抜体重別選手権大会、嘉納治五郎杯を立て続けに制し、ついに日本の第一人者としての地位を確立します。

1987年の世界柔道選手権大会では、決勝でソビエト連邦のユーリ・ソコロフを破り、悲願の金メダルを獲得。小学生の頃から柔道を始めて約16年、27歳にして世界王者となりました。

オリンピックとその後

1988年のソウルオリンピックでは、銅メダルを獲得。1990年のグッドウィルゲームズを最後に現役を引退しました。引退後は指導者として、後進の育成に力を注ぎます。1994年には母校である日本体育大学柔道部の監督に就任し、200名近い部員を抱える強豪柔道部を率いました。

山本は、自身の怪我の経験を踏まえ、学生たちに得意技以外の研究の重要性を説き、個性を伸ばす指導を行いました。また、研究者としても「女子柔道選手の走能力」や「柔道選手の減量に関する調査」などの論文を発表し、医学博士号を取得しています。

全日本柔道連盟でも指導者として尽力し、アテネ五輪では女子強化コーチ、北京五輪では内柴正人のコーチ、リオデジャネイロ五輪では日本柔道チームのリーダーを務めました。

主な戦績

1978年 全日本新人体重別選手権大会 2位
1979年 全日本新人体重別選手権大会 優勝
1980年 全日本学生選手権大会 優勝
1984年 アジア選手権大会 優勝
1986年 講道館杯 優勝
1986年 全日本選抜体重別選手権大会 優勝
1986年 嘉納治五郎杯 優勝
1987年 世界柔道選手権大会 優勝
* 1988年 ソウルオリンピック 3位

山本洋祐は、怪我という苦難を乗り越え、努力と工夫で世界一の柔道家となりました。その不屈の精神と、指導者としての才能は、多くの人々に感動と勇気を与え続けています。

もう一度検索