山田乙三

山田乙三：激動の時代を駆け抜けた陸軍大将

山田乙三（やまだ おとぞう）は、1881年（明治14年）に生まれ、1965年（昭和40年）に没した日本の陸軍軍人です。最終階級は陸軍大将。最後の関東軍総司令官として、激動の時代を駆け抜けました。

生い立ちと初期の軍歴

山田乙三は、陸軍経理官の三男として生まれましたが、山田貫之の養子となりました。成城学校から陸軍中央幼年学校を経て、1902年（明治35年）に陸軍士官学校を卒業。同期には、古荘幹郎、西尾寿造らがいました。さらに1912年（大正元年）には陸軍大学校を卒業し、土肥原賢二、飯田貞固らと同期でした。この頃から、山田は着実に軍人としてのキャリアを積み重ねていきました。

要職を歴任

参謀本部総務部長、陸軍士官学校校長、第12師団長など、陸軍の要職を歴任しました。特に軍令や教育畑での経験が長く、政治的な色彩は比較的薄かったとされています。1939年（昭和14年）には中支那派遣軍司令官から教育総監に就任し、1940年（昭和15年）には陸軍大将に進級しました。

東條内閣との関わり

1944年（昭和19年）、東條英機首相兼陸相が国務と統帥の一元化を図り、参謀総長を兼任しようとした際、山田は杉山元参謀総長と共に統帥権の独立への懸念を示しましたが、最終的にはこれを容認しました。しかし、同年7月のサイパン失陥を契機に東條内閣が退陣すると、梅津美治郎の後任として、山田が関東軍総司令官に任命されました。

関東軍総司令官として

関東軍総司令官は、満洲国駐箚特命全権大使を兼任することになっていたため、山田は事実上の満洲国大使ともなりました。1945年（昭和20年）8月9日、ソ連軍が対日参戦すると、山田は満州の国防団体の結成大会出席のため大連に出張中であり、急遽新京に帰還。総司令部を通化に撤退させ持久戦を試みましたが、8月15日には日本のポツダム宣言受諾により終戦。8月19日には、ソ連軍のワシレフスキー元帥との停戦交渉を開始しました。

シベリア抑留と帰国

終戦後、山田は関東軍総参謀長秦彦三郎らと共にソ連に抑留され、ハバロフスクの将校収容所に収容されました。10年以上に及ぶ抑留生活を送り、1956年（昭和31年）にようやく日本に帰国しました。

年譜

以下に山田乙三の主な年譜をまとめます。

1901年（明治34年）：陸軍中央幼年学校卒業
1902年（明治35年）：陸軍士官学校卒業
1903年（明治36年）：陸軍少尉
1905年（明治38年）：陸軍中尉
1912年（大正元年）：陸軍大尉、陸軍大学校卒業
1918年（大正7年）：陸軍少佐
1922年（大正11年）：陸軍中佐
1925年（大正14年）：陸軍大佐
1930年（昭和5年）：陸軍少将
1934年（昭和9年）：陸軍中将
1940年（昭和15年）：陸軍大将
1944年（昭和19年）：関東軍総司令官、在満州国特命全権大使
1945年（昭和20年）：終戦
1956年（昭和31年）：シベリア抑留より復員
1965年（昭和40年）：死去

栄典

山田乙三は、その功績により以下の位階と勲章を授与されています。

位階：正四位、従三位、正三位
勲章：勲二等瑞宝章

伝記

山田乙三の生涯については、以下の書籍で詳しく知ることができます。

楳本捨三『将軍の四季 最後の関東軍総司令官山田乙三大将』（光人社、1983年）
半藤一利、横山恵一、秦郁彦、原剛『歴代陸軍大将全覧 昭和篇 満州事変・支那事変期』（中央公論新社、2010年）

関連事項

都倉栄二：満州全権大使時代の秘書官
* ハバロフスク裁判：ソビエト連邦主体の軍事裁判

山田乙三は、激動の昭和時代を軍人として生きた人物であり、その生涯は日本の近現代史を語る上で重要な一側面を映し出しています。

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