山田信夫 (歴史家)

山田信夫：アジア遊牧民族史研究の先駆者

山田信夫（1920年2月17日 - 1987年4月26日）は、日本の著名な東洋史学者であり、大阪大学の名誉教授でした。彼の専門はアジア遊牧民族史、東西交渉史であり、特に中世ウイグル世俗文書の研究において、数々の業績を残しました。

生涯

山田信夫は1920年、山口県山口市に生まれました。第六高等学校を経て東京帝国大学文学部東洋史学科に進学し、1943年9月に卒業しました。学徒出陣を経て、戦後は東京帝国大学大学院に進み、東洋史研究者としての道を歩み始めます。

学問への志

大学院時代には、先輩である前田直典の提唱により、北方史研究会を設立。和田清による記念講演や柴田武によるトルコ語講座などを開催し、研究活動を活発化させました。モンゴル語、ペルシア語、アラビア語など、北方史研究に必要な言語の習得にも励みました。

研究者として

1949年、静岡大学講師となり、1951年に助教授に昇進。1959年には大阪大学文学部助教授に就任し、1967年に教授となりました。1975年12月から1977年3月まで国立民族学博物館教授を併任。1979年4月には大阪大学文学部東洋史研究室に新設された「アジア諸民族史講座」の初代教授となり、後進の育成に尽力しました。1983年に大阪大学を定年退官し、名誉教授の称号を受けました。退官後は、京都女子大学教授として教鞭をとりました。

研究内容と業績

山田信夫の専門は東洋史であり、特に北方史研究に情熱を注ぎました。中世ウイグル語文書の研究は、彼のライフワークとも言えるものであり、その成果は『ウイグル文契約文書集成』として結実しました。この業績は、ウイグル史研究における重要な貢献として高く評価されています。

また、東西交渉史にも造詣が深く、シルクロードを介した文化交流史の研究にも取り組みました。その研究成果は、『草原とオアシス』、『ペルシアと唐』などの著作にまとめられています。

人となり

山田信夫は、研究者としてだけでなく、教育者としても優れていました。多くの学生を指導し、その育成に尽力しました。また、温厚で誠実な人柄は、多くの人々に慕われました。中国史学者の西嶋定生とは六高・東京帝大の同級生であり、親交が深かったことでも知られています。

著作

『草原とオアシス』(ビジュアル版 世界の歴史 10) 講談社 1985
『北アジア遊牧民族史研究』東京大学出版会 1989
『ウイグル文契約文書集成』大阪大学出版会 1993
『天山のかなた：ユーラシアと日本人』阿吽社 1994
『西域 世界の歴史 10』河出書房新社 1969
『ペルシアと唐』(東西文明の交流 2) 平凡社 1971
『東アジア史入門』法律文化社 1975
『日本華僑と文化摩擦』巌南堂書店 1983
『騎馬民族史 2 正史北狄伝』平凡社 1972
『地のはての海の彼方へ』集英社 1976
『チムール帝国紀行』桃源社 1967

参考文献

神田信夫・山根幸夫編『戦中戦後に青春を生きて – 東大東洋史同期生の記録』山川出版社、1984年

山田信夫は、その生涯を東洋史研究に捧げ、アジア遊牧民族史、東西交渉史研究の発展に大きく貢献しました。彼の業績は、後世の研究者たちに受け継がれ、さらなる研究の発展に寄与しています。

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