山田右衛門作

山田右衛門作：波乱の生涯を辿る

山田右衛門作（やまだ えもさく）は、生没年不詳の江戸時代前期に生きた人物です。号を祐庵、古庵と称しました。彼は、島原の乱において原城に立て籠もった一揆勢の中で、数少ない生存者としてその名が知られています（ただし、この点については異説も存在します）。

絵師としての才能

幼少期にポルトガル人から西洋画法を学んだとされ、その才能から有馬直純、松倉重政、松倉勝家といった大名に南蛮絵師として仕えました。しかし、有馬直純がキリシタン信仰を捨てて日向へ移封されたため、一時的に浪人となります。その後、松倉家に絵師として再雇用されたと伝えられています。

島原の乱での役割

島原の乱が勃発した際、山田右衛門作は口之津で庄屋を務めていました。妻子を人質に取られたため、村人たちと共に原城に籠城することになります。城内では天草四郎に次ぐ副将として、本丸の守備を担いました。彼は幕府軍に対し、700人ほどの兵を率いていると豪語したとされています。

また、山田右衛門作は「天草四郎陣中旗」（天草切支丹館蔵、国の重要文化財）を描いた人物であるとも言われています。

裏切りと生き残り

彼は幕府軍との交渉に使われる矢文の作成にも関わっており、その立場を利用して幕府軍に内通しました。しかし、秘密裏に交わした矢文が露見し、内通が発覚。原城天草丸の牢に幽閉されます。その後、原城が落城する際、幕府軍の鍋島の者に斬られそうになりますが、内通を証明する矢文を見せることで助命され、生き延びました。しかし、幕府軍の総攻撃直前、妻子は一揆勢によって本丸枡形で斬殺されるという悲劇に見舞われています。

乱後の人生

乱の終結後、山田右衛門作は江戸に連行され、幕府軍の取り調べを受けました。その際の口上書である『山田右衛門作口書』は、当時の城内の様子を知る上で貴重な資料となっています。その後、彼はキリシタン目明しとして江戸で生活したと伝えられています。しかし、その後の消息については諸説あり、再びキリシタンに戻り、故郷に帰った後に長崎で病死したという説や、東南アジアに渡航し現地で没したという説も存在しますが、真相は不明です。

逸話：絵による教訓

明暦の大火以降、火の取り扱いが厳しくなった際、松平信綱の屋敷内で、番人がアワビの殻を使ってタバコを吸い、畳を焦がしてしまう事件が起きました。激怒した信綱は、その番人を処刑しました。そして、二度と同じ過ちを繰り返さないように、山田右衛門作に「番人がタバコを吸って畳を焦がした場面」と「番人が処刑される場面」を描かせ、それを人通りの多い場所に掲示しました。その絵の迫真的な描写によって、人々は強く戒められたと言われています。

まとめ

山田右衛門作は、絵師としての才能を持ちながら、島原の乱という歴史の大きな渦に巻き込まれた人物です。その後の人生は、謎に包まれており、様々な逸話が残されています。彼の波乱に満ちた生涯は、歴史の一面を垣間見せてくれる興味深い物語です。



参考文献
鶴田倉造『Q&A 天草四郎と島原の乱』熊本出版文化会館、2008年
北野典夫『天草キリシタン史－幻のパライゾへ』葦書房、1987年


関連事項
村山知義 - 島原の乱での山田を主題とした戯曲「終末の刻（とき）」を執筆

外部リンク
『山田右衛門作』 - コトバンク

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