山科檀林

山科檀林（やましなだんりん）

山科檀林は、日蓮宗の僧侶を育成する教育機関として、法性院日勇によって開創されました。檀林という名称は近世になってから一般化したもので、中世後期までは談所、学室、学問所などと呼ばれていました。天正年間から元禄年間にかけて、日蓮宗一致派は関東に八檀林、関西に六檀林を設け、近世日蓮教学における教育研究の拠点としました。

歴史

山科檀林は、1643年（寛永20年）に法性院日勇が、四条隆術の室・妙慧院殿了光日耀大姉の帰依を受けて、京都洛東山科の護国寺に開創されました。後水尾天皇の皇后である東福門院（徳川和子）は、日勇を召して法華経を受講し、深く帰依して浄財を寄進し、方丈や大講堂を建立しました。さらに、紀州徳川家二代藩主徳川光貞の室・安宮照子も総門および学徒寮を寄進し、山科檀林の基礎が築かれました。

1648年（慶安元年）、日勇は弟子の寂遠院日通に講務を譲り、京都市左京区にある本山妙傳寺の山門経営に尽力しました。日通は、1648年（慶安元年）から1661年（寛文元年）までの13年間、化主を務め、妙玄講堂や論議場を設け、檀林制規を定めました。また、浄財を勧募して諸堂を修繕し、山科檀林の基礎を確立しました。妙玄講堂は寂遠院と称され、論議場は通玄峰と名付けられました。

1803年（享和3年）7月、幕府は諸寺に対して、寺格に関する17項目の設問を行いました。主なものとして、ご朱印の有無、宮家公儀の位牌の有無、勅願所の有無、公儀その他からの葵紋の寄附の有無、袈裟・色衣着用の有無などが問われました。山科檀林は、これらの寺格に関する事柄とは関わりがないとして、すべて「無し」と回答しました。この回答の副本には、「将来のために記す。学林が縉紳・権門・公家に阿附することは劣の極みなり。この答にて宜し。或いは猶子官家の立入等は無詮の事也」と朱書きされており、檀林としての気概を示しています。

日通の弟子には、後に化主となる寂耀院日哲や、東山檀林の化主となった収玄院日祐がいます。また、愛知県一宮市の法蓮寺第十三世である久成院日相も日通の教育を受けました。身延山久遠寺第三十一世の一円院日脱は山科檀林の化主を務め、京都市の華光寺大研院日梵も山科檀林で学び、大津本要寺主を経て山科檀林の化主となりました。近世日蓮教学の礎を築いた優陀那日輝和尚もここで学んでいます。山科檀林の化主は579世に及びました。

1872年（明治5年）に廃檀となりました。

法脈

山科檀林からは、数多くの名僧が輩出されました。この法脈は、法性院日勇を縁祖とする山科法類、または勇師法縁と呼ばれています。この法縁から、通師法縁（堀之内法縁、千駄ヶ谷法縁、一ノ瀬法縁、雑司ヶ谷法縁）や潮師法縁が生まれました。山科檀林の出身者で、関東の飯高檀林で学んだ者、通師法縁と称するものは、関西ではすべて勇師法縁と称されます。

歴代化主

初祖: 法性院日勇
二祖: 寂遠院日通
四祖: 発心院日堯

脚注

参考文献

日蓮宗辞典 1981年10月13日刊
関西身延本山妙傳寺誌 2006年刊
山科護国寺古文書
拾遺都名所図会 1786年刊 ※境内図が描かれている。「同所南側にあり、法華宗にして、開基は日勇上人なり。京師妙伝に属す、一派の学校なり」

外部リンク

山科檀林旧跡　護国寺
* 山科檀林

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