岐阜抗争

岐阜抗争

岐阜抗争は、1962年（昭和37年）12月14日から同年末にかけて岐阜県で発生した、三代目山口組と鶴政会（後の稲川会）との間の大規模な暴力団抗争事件です。一部では「岐阜戦争」とも呼ばれています。

抗争勃発までの経緯

1962年9月16日、稲川組と芳浜会の間で抗争事件が発生しました。この事件が、後の岐阜抗争へと発展するきっかけとなります。

同年10月中旬、芳浜会菊田派の菊田吉彦と瀬古安会・鈴木康雄組長が、鶴政会幹部の林喜一郎に対し、舎弟にしてほしいと申し入れました。林は当初、この申し入れを了承しました。

しかしその後、鶴政会岐阜支部長であり、林一家組員でもあった清家国光が、菊田と鈴木に対し「林の若衆になるのは良いが、舎弟になることには反対である」と伝えました。この矛盾した対応が、さらなる混乱を招きます。

同年11月、実業家に転身していた中島巌（菊田吉彦の兄弟分）が、九代目池田一家の総裁に就任しました。中島は、九代目池田一家の跡目相続にあたり、菊田と鈴木への協力を約束しました。同時期、三代目山口組若頭の地道行雄が菊田と鈴木を舎弟としました。この動きに対し、林は警戒感を強めます。月末、林は横浜市南区蒔田町の自宅で、舎弟の網口和夫から菊田と鈴木が地道の舎弟になったことを知らされました。これを受け、林は若衆に菊田と鈴木の殺害を指示しました。芳浜会菊田一家幹部の足立哲雄は、菊田一家と池田一家の結束を図るため、中島巌の傘下に入りました。林の若衆らは菊田と鈴木の所在を掴めなかったため、標的を足立に切り替えました。

抗争の激化

12月14日、足立は車で大垣競輪場へ向かう途中、林の若衆である林康雄が運転するセドリックに追跡されました。セドリックには、下田耕市郎と江越正治が同乗していました。下田は自動式コルト45を所持していました。国道21号の岐阜県安八郡安八町東結において、林は運転するセドリックを足立の車に覆いかぶさるように横付けし、足立の車を停車させました。下田と江越はセドリックから降り、下田が足立の車に向かってコルト45で2発の銃弾を撃ち込みました。そのうち1発が足立の左腕に命中し、足立は車から飛び出して逃走しました。下田と江越は足立を追いながら拳銃を乱射しましたが、足立には命中しませんでした。その後、下田と江越は林のセドリックに引き返し、3人は逃走しました。足立は車で大垣市の外科病院に搬送され、重体でしたが一命を取り留めました。

12月15日、稲川裕芳が神奈川県警捜査四課に電話を入れると、捜査四課長から「岐阜に応援を出さないようにして欲しい」と迫られました。稲川はその指示に従い、林喜一郎に電話をかけ、「軽々しく行動するな」と指示しました。しかし、抗争は既に激化していました。

その後、林康雄と下田耕市郎と江越正治が指名手配されました。稲川は林を熱海市の自邸に呼び出し、林康雄と下田耕市郎と江越正治を、使用した拳銃を持参のうえで大垣警察署に出頭させるように指示しました。林喜一郎は林康雄と下田耕市郎と江越正治を大垣警察署に出頭させました。

抗争の終結

年末、名古屋市の料亭にて、高橋三治の仲介によって、菊田吉彦・鈴木康雄と林喜一郎との間で手打ちが行われました。林は岐阜県に林一家を置くことを承認させました。下田耕市郎と江越正治は懲役8年の刑を受け、林康雄は懲役4年の刑を受けました。この手打ちにより、岐阜抗争は一応の終結を迎えました。

参考文献

大下英治 『首領　昭和闇の支配者　三巻』大和書房＜だいわ文庫＞、2006年、ISBN 978-4-479-30027-4 のP.231～P.236
実話時代編集部 『山口組若頭』洋泉社、2007年、ISBN 978-4-86248-108-5 のP.94

もう一度検索