岡崎栄松

岡崎栄松：仙台の復興を導いた初代公選市長

岡崎栄松（1882年 - 1960年）は、明治から昭和にかけて活躍した政治家であり、教育者でもありました。特に、戦後の混乱期において、仙台市長として都市の復興に尽力したことで知られています。その生涯は、教育者としての出発から、行政官としての経験、そして仙台市長としての活躍、晩年まで、多岐にわたります。

生い立ちと教育

岡崎栄松は、1882年（明治15年）12月22日に、宮城県名取郡秋保村（現在の仙台市太白区西部）で生まれました。彼は、宮城師範学校を経て日本大学法律学科に進学し、教育者としての基礎を築きました。

教育者から行政官へ

大学卒業後、岡崎は教育者としてのキャリアをスタートさせました。丸森小学校の訓導、岩出山小学校の校長、宮城県桃生郡視学などを歴任し、教育行政に携わりました。1916年（大正5年）には、宮城県県視学に就任し、県全体の教育行政を監督する立場となりました。1919年（大正8年）からは、横浜市役所を皮切りに、行政職に転身し、東京市社会局保護課長、同福利課長、同監査課長、同下谷区長、同大森区長、同電気局電灯部長など、様々な要職を歴任しました。この間、1927年（昭和2年）には、日本栄養協会を設立し、学校給食の基礎を築くなど、社会福祉にも貢献しました。また、下谷区長時代には、横山大観や川合玉堂など、多くの芸術家と親交を深め、私財を投じて支援も行いました。

仙台市長としての活躍

1943年（昭和18年）に、疎開を兼ねて故郷に戻った岡崎は、宮城県商工経済会理事長に就任しました。そして、終戦後の1946年（昭和21年）には、公選による初の仙台市長選挙に立候補し、当選を果たしました。この選挙は、全国初の「モデル市長公選」として注目されました。選挙の結果、仙台市旧市街では対立候補が優勢でしたが、工場地域や農村部での支持が厚く、最多得票を獲得。市会での推薦を経て、仙台市長に就任しました。翌1947年（昭和22年）には、地方自治法に基づいた再選挙が行われましたが、岡崎は再選を果たし、その手腕を市政で発揮することとなります。

戦災復興と都市計画

仙台市長として岡崎が特に力を注いだのは、戦災からの復興事業でした。仙台空襲で焼け野原となった市街地に、青葉通り、広瀬通り、定禅寺通り、東二番丁通りといった、幅の広い幹線道路を整備しました。特に青葉通りは、両側歩道にケヤキ並木を植栽し、美しい景観を作り出しました。これらの道路建設は当時、批判も受けましたが、岡崎は「青葉通りは、私の死後必ずや評価されるであろう」と予言しました。また、勾当台公園や西公園といった中心部の公園も、岡崎の主導で建設されました。これらの都市計画は、現在の仙台市の骨格を形作る上で重要な役割を果たしています。

選挙無効判決と晩年

1951年（昭和26年）に3選を果たした岡崎でしたが、長期の市政運営によるワンマン体制に対し、批判も強まっていました。1955年（昭和30年）の市長選挙では、新人候補である弁護士の島野武に僅差で勝利したものの、選挙の不正を指摘され、裁判の結果、1957年（昭和32年）に選挙無効の判決が下され、失職することとなりました。その後、再選挙には出馬せず、島野武が次期市長に就任しました。市長退任後も、岡崎は宮城教育大学の創設に尽力し、開校時には石灯籠を贈呈しました。1960年（昭和35年）に亡くなりましたが、生誕の地にある岡崎牧場には、書斎や愛でていた栗の木が残されています。また、仙台市戦災復興記念館には、彼の胸像が設置されています。岡崎は、仙台ロータリークラブの会長も務めていました。

岡崎栄松の遺産

岡崎栄松は、戦後の仙台市復興に尽力し、現在の仙台市の基礎を築いた人物として、高く評価されています。その功績は、道路や公園などの都市計画だけでなく、教育や社会福祉の分野にも及んでいます。彼の功績は、後世に語り継がれるべき貴重な遺産と言えるでしょう。

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