岡晴夫のマドロスの唄

1950年（昭和25年）に公開された日本の長篇劇映画『岡晴夫のマドロスの唄』は、同名の流行歌をタイトルに冠し、歌手の岡晴夫を主演に据えた作品です。

製作は日本映画科学研究所が行い、配給は当時の東京映画配給が担当しました。この東京映画配給は、第二次世界大戦後の1949年10月1日に設立されたばかりの新興映画配給会社で、現在の東映の前身にあたります。主に東横映画や太泉スタヂオといった系列会社の製作物を劇場に供給することを目的としていましたが、本作のように独立系製作会社の作品も積極的に配給していました。本作は、シネアートアソシエートオブトーキョー製作の『ヒットパレード』と二本立てで公開され、「歌謡映画祭」と銘打たれて興行されました。

監督を務めた野口博志は、トーキー現代劇製作のために建てられた日活多摩川撮影所で監督デビューしましたが、同撮影所は1942年の戦時統合により大映東京撮影所（現在の角川大映撮影所）となりました。以降、野口監督が同撮影所で手がけた作品の記録は見当たりません。その後、1954年に新たな日活撮影所が開所された際に、日活に復帰しています。

撮影を担当した広川朝次郎も、戦前から撮影技師として活動しており、特に戦前の大都映画で製作されたサイレントの現代劇を手がけていました。大都映画も戦時統合で大映の一部となりましたが、広川技師の大映作品も確認されていません。広川技師の次作は、本作の同時上映作品『ヒットパレード』を製作したシネアートアソシエートオブトーキョー（ハワイの映画会社とされる）による『裸の天使』でした。

なお、本作と同日公開で、上映時間71分、東横映画製作、「東映」（会社設立は1951年）配給、小田基義監督、久我美子および龍崎一郎主演による『マドロスの唄』という作品の情報が、キネマ旬報映画データベースや文化庁の「日本映画情報システム」に掲載されています。しかし、この作品の現存は確認されておらず、東京映画配給の後身である東映が提供する情報が反映されている日本映画製作者連盟のリストにもその名は見当たらないため、本作とは別の作品である可能性、あるいは情報が混同されている可能性が指摘されています。

本作の上映用プリントの現存状況については、東京国立近代美術館フィルムセンターでは所蔵が確認されていません。しかし、福岡市総合図書館が本作の上映用プリント等を所蔵していることが確認されています。

作品のデータとしては、上映時間は72分（8巻、1,961メートル）、白黒のスタンダード・サイズ（1.37:1）、毎秒24コマ、モノラル録音で製作されました。映倫番号は旧映倫の20番です。公開日は1950年2月14日でした。

主なスタッフとして、監督に野口博志、脚本に小森静男、撮影に広川朝次郎が名を連ねています。キャストには主演の岡晴夫をはじめ、逢初夢子、鈴木美智子、佐伯秀男が出演しました。

参考資料として『クロニクル東映 1947-1991』が挙げられます。関連する項目としては、製作会社の日本映画科学研究所、配給会社の東京映画配給、同時上映作品を製作したシネアートアソシエートオブトーキョー、同時上映作品の『ヒットパレード (1950年の映画)』、そして映画の元となった楽曲である「マドロスの唄」（岡晴夫の楽曲）などがあります。インターネット上では、国立国会図書館、日本映画製作者連盟、日本映画データベースなどで本作に関する情報を参照することができます。

もう一度検索