岡本知

岡本知（おかもと ちかし）は、1939年6月29日に生まれ、2003年4月23日に亡くなった、日本の音響監督です。彼はグロービジョンに所属し、そのキャリアを通じて数々の作品に貢献しました。

満州国で生まれた岡本は、終戦後に家族と共に日本へ引き揚げました。その後、日本大学芸術学部映画学科を卒業し、グロービジョンに入社しました。

彼の代表的な仕事として、テレビアニメ『サザエさん』の録音演出が挙げられます。1969年の初回放送から2003年まで、30年以上にわたり、この国民的アニメの音響を支え続けました。また、映画番組「ゴールデン洋画劇場」などでは、吹き替えの演出も担当し、幅広いジャンルで才能を発揮しました。

岡本は、その明るく竹を割ったような性格で知られていましたが、一方で、自己主張が強く、直接的な物言いから時に反感を買うこともありました。しかし、これは彼が引揚者として「人から馬鹿にされてはいけない」という環境で育ったことに起因すると言われています。そのため、彼の率直な態度は、時に周囲からの反感を買う一方で、その正直さから信頼を寄せる人も多くいました。

彼は音響監督の仕事を「芸者と同じ」と捉え、「贔屓のお客に指名されなきゃ仕事がない、御指名がくるまで待ってる身」と語っていました。この言葉からは、彼が自身の仕事を一種のサービス業として捉え、常にクライアントの期待に応えようとしていた姿勢がうかがえます。

声優の佐々木るんによると、岡本はキャスティングにおいて、二枚目の声優をあえて三枚目や悪役で起用するなど、ユニークな発想を持っていたそうです。この点からも、彼が既存の枠にとらわれず、常に新しい表現を追求していたことがわかります。

『サザエさん』の録音演出は、フジテレビの別所孝治の推薦で起用されたと言われています。彼は、BGMの選曲も音響効果の柏原満と共に担当し、番組に対する強い思い入れと執念を持って仕事に取り組んでいました。また、脚本家の西村則男とは大学時代の同級生であり、親交がありました。

晩年は肺気腫が悪化し、体調が優れない中、酸素ボンベを抱えながら収録に参加していました。しかし、スタジオの席に着くと、体調や外見とは裏腹に、往年と変わらぬ張りのある声で声優たちに演出をしていたと言われています。

岡本知は、2003年4月23日に肺気腫のため63歳でこの世を去りましたが、彼の作品は今もなお多くの人々に愛され続けています。

主な参加作品

テレビアニメ
サザエさん（1969年 - 2003年） - 録音・演出
のらくろ（1970年） - 録音・演出
おんぶおばけ（1972年 - 1973年） - 録音・演出

吹き替え（映画）
悪魔たち、天使たち - 演出
アナコンダ ※ソフト版 - 演出
イージー・マネー/一獲千金 - 演出
エクスタミネーター ※フジテレビ版 - 演出
オズの魔法使 ※NHK版 - 演出
スイート・チャリティー - 演出
スネーク・アイズ ※ソフト版 - 演出
ソルジャー ※ソフト版 - 演出
バッドボーイズ ※フジテレビ版 - 演出
ビクター/ビクトリア|ビクター_ビクトリア - 演出
ブルースチール ※フジテレビ版 - 演出
ポリス・ストーリー2/九龍の眼|ポリス・ストーリー2_九龍の眼 ※VHS版 - 演出
ポルターガイスト ※フジテレビ版 - 演出
ポルターガイスト2 - 演出
マジック・ダイナソー - 演出
マネー・トレイン ※フジテレビ版 - 演出
ミュータント・タートルズ ※フジテレビ版 - 演出
めぐり逢えたら ※フジテレビ版 - 演出
遊星からの物体X - 演出
ユージュアル・サスペクツ ※ソフト版 - 演出

吹き替え（ドラマ）
ハット・スクワッド 帽子の騎士たち - 演出

吹き替え（アニメ）
グーフィー・ムービー ホリデーは最高!! - 演出
パパはグーフィー - 演出

ラジオ
連続ラジオまんが おはようサザエさん（文化放送、1977年-1987年）

レコード
こどものテレビ・ドラマ・シリーズ サザエさん（東芝音楽工業、1971年）
テレビまんがアクションシリーズ まんが名作劇場 サザエさん ジムボタン（日本コロムビア、1975年）

参考文献
大橋義輝『『サザエさん』のないしょ話』データハウス、2012年。ISBN 9784781701219。

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