岡村正広

岡村正広（おかむら まさひろ、1970年4月13日 - ）は、日本の視覚障害を持つ陸上競技選手で、主にマラソンで活躍しています。静岡県御前崎市出身で、現在はRUNWEBに所属しています。

経歴

1970年4月13日、静岡県小笠郡浜岡町（現在の御前崎市）に生まれた岡村氏は、幼少期から視覚に障害があり、視野が狭いために球技を避けていました。中学1年生で陸上競技を始め、掛川西高等学校を経て愛知大学経済学部へ進学。大学卒業後、23歳から本格的にマラソンに取り組み始めます。静岡地方裁判所などで裁判所書記官として約10年間勤務していましたが、視覚障害の進行により33歳で退職を決断します。

その後、鍼灸マッサージ師を目指し、2005年に浜松盲学校（現在の浜松視覚特別支援学校）で学び始めます。この頃、同校の卒業生であり視覚障害マラソン選手の第一人者である新野正仁氏と出会います。2008年の北京パラリンピックでは、岡村氏が新野氏のガイドランナーを務め、マラソンの後半を伴走して19位での完走を支えました。この経験が、後に自身が選手としてパラリンピックを目指す大きなきっかけとなったと語っています。筑波大学理療科教員養成施設で資格を取得し、2010年からは千葉盲学校で理療科教員として勤務しています。

競技実績

視覚障害マラソン選手として、クラスT12（旧クラスT13およびT12）で国内外の大会に出場しています。

2011年：ニュージーランドで開催されたIPC陸上競技世界選手権大会マラソンで銅メダルを獲得。
2012年：ロンドンパラリンピックマラソンに出場し、4位入賞。惜しくもメダルには届きませんでしたが、この経験を経て競技継続への決意を新たにしました。
* 2016年：別府大分毎日マラソン大会の視覚障害者の部で優勝し、2大会連続となるパラリンピック出場権を獲得。同年9月、リオパラリンピックマラソンで見事銅メダルを獲得し、長年の努力を結実させました。

また、クラスT13およびT12の10000mとマラソンにおいて、日本記録を樹立しています。

選手としての特徴

岡村氏は網膜色素変性症による進行性の視野狭窄を抱えており、暗所での視力はほとんどなく、日中でも視野はわずか5度程度しかありません。このような条件下で、スタミナの消耗を抑えるために、腰を落とし、頭部の上下動を少なくする独特のランニングフォームを自然と体得したといいます。このフォームは、競歩選手のそれに近いと評されることもあります。

フルタイムで教員として勤務しているため、早朝や夜間、休日を利用して練習時間を確保しています。勤務先の学校の校庭などを活用し、時には1ヶ月に870kmもの距離を走り込むことで、高い走力を維持してきました。また、鍼灸師の資格を持っているため、練習後の体のケアに針治療などを取り入れています。

評価と受賞

北京パラリンピックで伴走を受け、自己ベストを更新した新野正仁氏は、岡村氏との練習や伴走が自身の競技力向上に不可欠だったと語り、その出会いを「幸運だった」と振り返っています。

リオパラリンピックでの銅メダル獲得により、文部科学大臣からパラリンピック優秀者顕彰が贈られました。所属するRUNWEBも、岡村氏への継続的な支援が評価され、スポーツ功労団体として文部科学省より表彰を受けています。出身地の御前崎市からは、同じくリオ五輪メダリストの飯塚翔太氏と共に、市として初の市民栄誉賞が贈られました。御前崎市役所玄関脇には、岡村氏の言葉である「継続は力なり」が刻まれた記念碑が設置されています。

このほか、静岡県知事特別表彰、四街道市功労表彰、千葉県知事賞など、数多くの賞を受賞しています。また、リオパラリンピック日本代表選手団合同パレードへの参加や、テレビ・ラジオ番組への出演など、多方面で活躍の機会を得ています。

視覚障害という困難を抱えながらも、競技への情熱を持ち続け、教員としての職務と両立させながら世界の舞台で成果を上げた岡村正広氏は、多くの人々に勇気と感動を与えています。

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