岡田摂蔵

岡田摂蔵：激動の時代を生きた教育者

岡田摂蔵は、生年は不明ながら、幕末期の肥後藩（現在の熊本県）に藩士として生まれました。彼は、激動の時代の中で、教育者、学者として多岐にわたる分野で活躍した人物です。その足跡は、日本の近代化に大きく貢献しました。

若き日の学び

岡田は、安政6年（1859年）に、大阪で緒方洪庵が開いていた適々斎塾（適塾）に入門し、蘭学や医学などの知識を習得しました。ここで培った先進的な知識と探求心は、後の彼の活動の基盤となりました。

慶應義塾との関わり

文久3年（1863年）12月、岡田は江戸に出て、当時鉄砲洲にあった福澤諭吉の慶應義塾に入塾しました。塾では、持ち前の才能を発揮し、すぐに頭角を現しました。元治元年（1864年）頃には、幕府海軍に出仕していた岡本周吉（古川正雄）の後任として、慶應義塾の塾長に就任しました。この若さでの塾長就任は、彼の卓越した能力と人望を示すものでしょう。彼の後任は、足立寛が務めました。

海外視察と帰国後の活動

慶応元年（1865年）、外国奉行の柴田日向守（貞太郎）が特命理事官としてフランス・イギリスに派遣された際、岡田は随行員として同行しました。この派遣には、水品楽太郎、冨田達三、塩田三郎、福地源一郎、小花作助など、後の日本を支える人材も含まれていました。翌年帰国後、彼は海外での見聞をまとめた『航西小記』を著しました。この著書は、パリで実用化されたばかりの点字を日本に初めて紹介した書物として知られています。帰国後は、各地で教育者として活躍し、後進の育成に尽力しました。

教育者としての貢献

明治2年（1869年）4月から2ヶ月間は岡山藩に滞在し、藩の子弟であった高山紀斎の慶應義塾入門を斡旋しました。また、長崎や熊本藩の洋学所でも教鞭をとり、多くの学生を育てました。明治3年（1870年）には、名村泰蔵らの協力を得て熊本藩に洋学校を創設しましたが、これは後に廃止されました。

海軍省での活動と晩年

熊本藩の洋学校が廃止された後、岡田は上京し、海軍省の権秘書官に就任しました。しかし、病に倒れ、故郷に戻り、明治9年（1876年）1月17日に生涯を閉じました。彼の孫には、女優の岡田嘉子がいます。

岡田摂蔵の遺産

岡田摂蔵は、幕末から明治初期という激動の時代において、教育者として、また学者として、日本の近代化に大きく貢献しました。彼の幅広い知識と国際的な視野は、当時の日本にとって貴重なものでした。彼の業績は、今日の私たちにも大きな影響を与え続けています。

参考文献

慶應義塾史事典編集委員会編『慶應義塾史事典』慶應義塾大学出版会、2008年11月。ISBN 978-4-7664-1572-8。

関連文献

「航西小記」について お茶の水地理学会
* 肥後実学党と初期の慶應義塾（一） －林正明と岡田攝蔵を中心として

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