岡譲司

俳優 岡譲司の生涯

岡譲司（おか じょうじ、1902年5月25日 - 1970年12月17日）は、日本の映画黄金期を彩った名優です。本名は中溝勝三といい、美濃部進、岡譲二という芸名も使用していました。そのキャリアは、サイレント映画からトーキー映画へと移り変わる激動の時代と重なり、数々の映画史に残る作品に出演しました。

生い立ちと俳優への道

1902年、東京府東京市京橋区に生まれた岡は、佐賀藩の勘定方を務めた祖父と銀行頭取の父を持つ裕福な家庭で育ちました。当初は画家を志していましたが、立教大学商科に進学し、卒業後は日本蓄音器商会（現日本コロムビア）に入社。広告宣伝部長にまで昇進しますが、友人の誘いをきっかけに日活へ転身。1929年、日活太秦撮影所に入り、映画界でのキャリアをスタートさせました。

サイレント映画からトーキー映画へ

当初は「美濃部進」名義で活動し、『維新の京洛 竜の巻 虎の巻』で映画デビューを果たしました。その後、現代劇を中心に活躍し、『赤い灯青い灯』では主演に抜擢されるなど、着実にその地位を築きました。しかし、1931年には女優・澤蘭子との恋愛および失踪事件が起こり、日活を退社。その後、松竹蒲田撮影所へ移籍し、「岡譲二」と改名。この芸名は、当時の所長が愛飲していた洋酒「ジョニー・ウォーカー」にちなんで名付けられたといわれています。

松竹蒲田時代には、田中絹代や初代水谷八重子らと共演し、トーキー映画の時代に入るとその美声が評判となり、スターとしての地位を確立しました。特に野村芳亭監督作品には多く出演しましたが、野村監督の急逝により、1934年に松竹を退社し、協同映画を設立しました。

戦争と復帰、そして晩年

協同映画解散後、日活多摩川撮影所を経て、1937年には東宝映画へと移籍。第二次世界大戦中には3度の召集を受け、陸軍中尉として台湾に駐屯。終戦後、1946年に東宝に復帰し、映画界へ復帰しました。しかし、東宝争議を経て大映と契約。1954年には「岡譲司」と改名し、晩年まで数々の作品に出演しました。

多彩な役柄

岡譲司は、時代劇から現代劇まで幅広いジャンルの作品で活躍しました。特に、明智小五郎と金田一耕助の両方を演じた数少ない俳優としても知られています。その演技は、観客を魅了し、多くのファンを魅了しました。晩年は妻と離婚し、子供は妻の姓を名乗ったそうです。

死去

1970年、高血圧による心臓病のため、68歳で生涯を閉じました。その墓は青山霊園にあります。

主な出演作品

岡譲司の出演作品は、日活、松竹、東宝、大映と多岐に渡り、そのフィルモグラフィーは日本の映画史を語る上で欠かせないものです。以下に代表的な作品をいくつか紹介します。

日活太秦撮影所時代
『維新の京洛 竜の巻 虎の巻』（1928年）
『赤い灯青い灯』（1929年）
『殉教血史 日本二十六聖人』（1931年）
松竹蒲田撮影所時代
『七つの海』前後篇（1931年、1932年）
『上陸第一歩』（1932年）
『乳姉妹』（1932年）
『非常線の女』（1933年）
『婦系図』（1934年）
東宝映画時代
『北支の空を衝く』（1937年）
『武蔵坊弁慶』（1942年）
『音楽大進軍』（1943年）
『命ある限り』（1946年）
大映時代
『素浪人罷通る』（1947年）
『氷柱の美女』（1950年）
『毒蛇島綺談 女王蜂』（1952年）
『関八州勢揃い』（1954年）

これらの作品は、岡譲司の多才な演技と、日本の映画史における重要な作品として、今もなお多くの人々に愛されています。彼の映画に対する情熱と才能は、後世に語り継がれるべきでしょう。

もう一度検索