岡部長泰

岡部長泰（おかべ ながやす）

岡部長泰は、江戸時代前期に和泉国岸和田藩の第3代藩主を務めた人物です。岸和田藩岡部家の4代目にあたります。

生涯

第2代藩主・岡部行隆の長男として江戸で生まれ、幼名は宣就と名乗りました。貞享3年（1686年）に父の隠居を受けて家督を相続し、藩主となりました。

当時の岸和田藩は、祖父である岡部宣勝、父である行隆の時代から藩政が安定し、財政も豊かな全盛期を迎えていました。長泰は、そのような状況にあっても奢侈を戒め、倹約を重視する法令を定めました。また、文武を奨励し、特に儒学を好んで林鳳岡に師事し、自らも藩士らに儒学を講義するなど、教育にも力を注ぎました。和歌や武芸にも優れており、智勇兼備の人物として知られています。民政においても善政を敷いたことから、「誉れある将」と賞賛されました。

元禄16年（1703年）には、京都の伏見稲荷大社を岸和田城三の丸に勧請し、五穀豊穣を祈願する稲荷祭を始めました。この稲荷祭が、現在全国的に有名な「岸和田だんじり祭」の起源になったとされています。

宝永元年（1704年）には、姫路藩主・本多忠国の死去に伴い、幕府から大和川付け替え工事の引き継ぎを命じられ、これを完遂しました。このことからも、長泰が水利・治水に精通し、民政において優れた手腕を発揮したことがうかがえます。

享保6年（1721年）9月22日、家督を次男の長敬に譲って隠居し、享保9年（1724年）7月18日に岸和田で亡くなりました。享年75。墓所は大阪府岸和田市の泉光寺にあります。

系譜

父：岡部行隆（1617-1688）
母：堀直寄の娘
正室：内藤頼長の娘
側室
次男：岡部長敬（1680-1724）
生母不明の子女
長男：龍千代
三男：岡部長徳
四男：亮賢
五男：柳生宗盈（1692-?） - 柳生俊方の養子
六男：岡部長紹

創作における岡部長泰

映画『刃傷未遂』（1957年、大映）には、岡部美濃守という勅使供応役の大名が登場します。この作品は、赤穂事件のきっかけとなった江戸城・松の廊下での刃傷事件の約1年前を描いたもので、長泰をモデルにしたと思われる人物が、高家筆頭の吉良上野介から無理難題を吹っかけられながらも、逆にこれをあしらい上野介に恥をかかせるという内容でした（演：長谷川一夫）。ただし、史実では長泰が担当したのは朝鮮通信使の供応であり（吉良とは無関係）、元禄13年（1700年）には稲葉知通（豊後臼杵藩主5万石）が勅使供応役を務めています。

関連項目

だんじり

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