岡野良定

岡野良定：実業家として、そしてサッカー界の巨人として

岡野良定（1916年9月10日-2008年1月30日）は、広島県広島市出身の実業家であり、三菱自動車工業会長を歴任した人物です。しかし、彼の名は、日本のサッカー界においても、特別な存在として記憶されています。

学生時代からサッカーに打ち込み、広島一中（現広島県立国泰寺高校）、広島高等学校と、サッカー選手として頭角を現しました。特に広島高等学校時代には、1938年の全国高等学校ア式蹴球大会で主将としてチームを優勝に導く活躍を見せました。京都帝国大学経済学部卒業後も、サッカーへの情熱を燃やし続けました。

1941年、三菱重工業に入社。戦時中は召集され、終戦後はシベリア抑留を経験しますが、1948年に復員。戦後の混乱期においても、サッカーへの情熱は失われることはありませんでした。

1950年、三菱重工が分社化されたことをきっかけに、中日本重工でサッカー部の創設に携わります。選手兼任監督としてチームを率い、関西学院大学出身の選手らと共にチームを強化。1956年には全国都市対抗で準優勝という輝かしい成績を収めました。1958年に新三菱重工が東京に移転すると、岡野氏はサッカー部も東京に移し、更なる強化に尽力します。1959年には全日本実業団選手権で準優勝を果たし、実業団トップクラスのチームへと成長させました。

1965年には、日本サッカーリーグの初代監督に就任。1年で監督を退任した後も、サッカー部長や相談役としてチームを支え続けました。その手腕は、選手獲得にも発揮されました。片山洋選手の獲得に尽力したほか、入社試験を終えていた横山謙三選手や、カツ丼で懐柔した杉山隆一選手など、多くの才能を三菱重工サッカー部に招き入れました。

1990年代、サッカー部のプロ化を控え、岡野氏は三菱自動車工業の副社長に就任。サッカー部の三菱自動車工業への移管、そして浦和レッドダイヤモンズの発足にも深く関与しました。森孝慈氏ら後進を支援し、1992年から2001年まで浦和レッズの取締役会長、相談役として、クラブの発展に貢献しました。

浦和レッドダイヤモンズのアマチュア発足時には、80歳という高齢にもかかわらず、選手として登録されるほど、サッカーへの愛は生涯に渡って尽きることがありませんでした。

三菱グループ全体のスポーツ振興にも貢献し、その功績は広く認められています。三菱自動車工業では、1979年に常務、1983年に副社長、1985年には会長に就任し、実業家としても大きな成功を収めました。

2008年1月30日、心不全のため91歳で逝去しました。彼の功績は、日本のサッカー界、そして三菱グループの歴史に永遠に刻まれています。岡野良定氏は、単なる実業家やサッカー指導者という枠を超え、日本のスポーツ界に大きな足跡を残した人物と言えるでしょう。彼の熱意と指導力は、後世のスポーツマンたちに大きな影響を与え続けています。

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