岩井宏
岩井宏は、1944年2月23日に生まれ、2000年7月24日に56歳でその生涯を閉じた、日本の多才な音楽家です。シンガーソングライター、バンジョーおよびギターの演奏家、そして音楽ディレクターとして活躍しました。特にバンジョー奏者としては、「日本一のバンジョー弾き」と称され、フォーク、ブルーグラス、オールドタイムといったジャンルにおける日本の草分けとして、数多くの後進に深い影響を与えました。
サラリーマンとして社会に出た後、彼は音楽への情熱を再燃させます。1966年には、京都フォークソング集団AFL（アソシエイティッド・フォークロリスト）の設立メンバーの一人となり、デューディ・ランブラーズをはじめとする関西の学生バンドでバンジョー奏者として参加しました。
転機となったのは1968年、京都YMCAでのコンサートで高田渡の歌に出会ったことです。彼は高田のバンジョーサポートを務めるようになり、労音や大学のバリケードなどを巡る全国ツアーに同行。同年、東京原宿に設立されたアート音楽出版に入社し、後にURCレコード関連の版権・音源管理も行う同社の社員として活動しました。
この時期、岩井は「あんぐら音楽祭」など様々なライブやコンサートで、高田渡、岡林信康、高石ともやら人気フォークシンガーのバッキングを担当。特に高田の代表曲「大・ダイジェスト版三億円強奪事件の唄」における彼のバンジョー演奏は不可欠な要素であり、当時のライブ盤やシングルレコードでその音色を聴くことができます。彼はまた、朝の人気番組「ヤング720」にも高田や岡林と共に出演しました。
詩人とのコラボレーションも岩井の活動の重要な一面です。1970年には、京都在住の詩人、有馬敲の子ども向け詩に曲をつけ、自ら歌唱・演奏したLP『ぼくのしるし わらべうた24』をURCからリリースしました。この作品には、後の彼のほのぼのとした温かい作風の原点が見て取れます。この頃、高田渡が音楽舎を離れ活動が一時停滞したこともあり、岩井はアート音楽出版でURCのディレクターとしても手腕を発揮しました。1972年に同社を退社した後も、小室等と共にキングレコード・ベルウッド・レコードの契約ディレクターを務めています。
岩井が愛用したのは、フォークシンガーのピート・シーガーが考案したロングネック・バンジョーです。初期にはブルーグラスで一般的なスリーフィンガー奏法を主に用いましたが、1970年代からはオールドタイムのフレイリング（クロウハンマー）奏法へと移行。この奏法は五つの赤い風船の西岡たかしから伝授されたものです。彼のバンジョープレイは、ブルーグラスにルーツを持ちながらも、極めて独特で、ブルーグラスやオールドタイムとも異なる、彼にしか出せない「和」を感じさせる独自の音色を持っていました。チューナーがまだ一般的ではなかった時代に、要求されるシビアなチューニングに応え、的確なバッキングを行う才能は天性のものと言えるでしょう。
全日本フォークジャンボリーには第1回から参加。ソロとして春歌などもレパートリーに加えました。1970年の第2回ジャンボリーでは高田渡、加川良らのサポートを務め、その演奏は実況録音盤に収録され知名度を上げます。この頃から高田、加川との共演が増え、客席を笑いに包むことから「3バカトリオ」と呼ばれ親しまれました。1972年には、幻とされる10枚組LP『1972春一番BOX』を吉野金次と共に自主制作しています。
1973年7月25日、岩井はベルウッド・レコードからソロアルバム『30才／岩井宏』を発表しました。生まれたばかりの息子、聡に捧げられたこの作品を最後に、彼はプロシンガーおよび音楽ディレクターとしての活動を停止します。これは、アルバム一枚を出したらプロ活動を辞め、アマチュアとして音楽を続けるという彼の強い意志によるものでした。この突然の引退には、書店経営のため音楽を辞めた早川義夫の場合と同様、高田渡が「卑怯だ」と憤慨したというエピソードが残されており、仲間が音楽界から去ることへの高田の強い思いが伺えます。
メジャーシーンから身を引いた後も、岩井が音楽から完全に離れることはありませんでした。彼はオールドタイムの仲間とバンド「シャックリ・ウインド」を結成し、喫茶店などで演奏活動を続け、1980年には友部正人の自主制作アルバム制作を手伝うなど、裏方としても関わりました。1980年代後半に関西へ移住してからはバンド「はっぴっぴー」に参加。晩年まで曲を書き続け、ブルーグラス・オールドタイム専門誌への寄稿なども行い、バンジョー奏者の草分けとして多くのファンから尊敬を集めました。息子によると、指の怪我の影響でバンジョー演奏が思うようにできなくなった時期があったようで、晩年はバンジョーよりアコースティックギターを演奏することが増えたそうです。坂庭省悟が彼の楽曲「風のない街」をカバーするなど、他のミュージシャンにも影響を与えました。彼の生涯最後のステージは、亡くなるわずか一週間前のライブでした。
2000年7月24日、岩井宏は交通事故により逝去しました。享年56歳。彼の死後、音楽雑誌に追悼記事が掲載され、ソロアルバム『30才／岩井宏』はCD化、後に再発もされ、その音楽が再び多くの人々に届けられています。
サラリーマンとして社会に出た後、彼は音楽への情熱を再燃させます。1966年には、京都フォークソング集団AFL（アソシエイティッド・フォークロリスト）の設立メンバーの一人となり、デューディ・ランブラーズをはじめとする関西の学生バンドでバンジョー奏者として参加しました。
転機となったのは1968年、京都YMCAでのコンサートで高田渡の歌に出会ったことです。彼は高田のバンジョーサポートを務めるようになり、労音や大学のバリケードなどを巡る全国ツアーに同行。同年、東京原宿に設立されたアート音楽出版に入社し、後にURCレコード関連の版権・音源管理も行う同社の社員として活動しました。
この時期、岩井は「あんぐら音楽祭」など様々なライブやコンサートで、高田渡、岡林信康、高石ともやら人気フォークシンガーのバッキングを担当。特に高田の代表曲「大・ダイジェスト版三億円強奪事件の唄」における彼のバンジョー演奏は不可欠な要素であり、当時のライブ盤やシングルレコードでその音色を聴くことができます。彼はまた、朝の人気番組「ヤング720」にも高田や岡林と共に出演しました。
詩人とのコラボレーションも岩井の活動の重要な一面です。1970年には、京都在住の詩人、有馬敲の子ども向け詩に曲をつけ、自ら歌唱・演奏したLP『ぼくのしるし わらべうた24』をURCからリリースしました。この作品には、後の彼のほのぼのとした温かい作風の原点が見て取れます。この頃、高田渡が音楽舎を離れ活動が一時停滞したこともあり、岩井はアート音楽出版でURCのディレクターとしても手腕を発揮しました。1972年に同社を退社した後も、小室等と共にキングレコード・ベルウッド・レコードの契約ディレクターを務めています。
岩井が愛用したのは、フォークシンガーのピート・シーガーが考案したロングネック・バンジョーです。初期にはブルーグラスで一般的なスリーフィンガー奏法を主に用いましたが、1970年代からはオールドタイムのフレイリング（クロウハンマー）奏法へと移行。この奏法は五つの赤い風船の西岡たかしから伝授されたものです。彼のバンジョープレイは、ブルーグラスにルーツを持ちながらも、極めて独特で、ブルーグラスやオールドタイムとも異なる、彼にしか出せない「和」を感じさせる独自の音色を持っていました。チューナーがまだ一般的ではなかった時代に、要求されるシビアなチューニングに応え、的確なバッキングを行う才能は天性のものと言えるでしょう。
全日本フォークジャンボリーには第1回から参加。ソロとして春歌などもレパートリーに加えました。1970年の第2回ジャンボリーでは高田渡、加川良らのサポートを務め、その演奏は実況録音盤に収録され知名度を上げます。この頃から高田、加川との共演が増え、客席を笑いに包むことから「3バカトリオ」と呼ばれ親しまれました。1972年には、幻とされる10枚組LP『1972春一番BOX』を吉野金次と共に自主制作しています。
1973年7月25日、岩井はベルウッド・レコードからソロアルバム『30才／岩井宏』を発表しました。生まれたばかりの息子、聡に捧げられたこの作品を最後に、彼はプロシンガーおよび音楽ディレクターとしての活動を停止します。これは、アルバム一枚を出したらプロ活動を辞め、アマチュアとして音楽を続けるという彼の強い意志によるものでした。この突然の引退には、書店経営のため音楽を辞めた早川義夫の場合と同様、高田渡が「卑怯だ」と憤慨したというエピソードが残されており、仲間が音楽界から去ることへの高田の強い思いが伺えます。
メジャーシーンから身を引いた後も、岩井が音楽から完全に離れることはありませんでした。彼はオールドタイムの仲間とバンド「シャックリ・ウインド」を結成し、喫茶店などで演奏活動を続け、1980年には友部正人の自主制作アルバム制作を手伝うなど、裏方としても関わりました。1980年代後半に関西へ移住してからはバンド「はっぴっぴー」に参加。晩年まで曲を書き続け、ブルーグラス・オールドタイム専門誌への寄稿なども行い、バンジョー奏者の草分けとして多くのファンから尊敬を集めました。息子によると、指の怪我の影響でバンジョー演奏が思うようにできなくなった時期があったようで、晩年はバンジョーよりアコースティックギターを演奏することが増えたそうです。坂庭省悟が彼の楽曲「風のない街」をカバーするなど、他のミュージシャンにも影響を与えました。彼の生涯最後のステージは、亡くなるわずか一週間前のライブでした。
2000年7月24日、岩井宏は交通事故により逝去しました。享年56歳。彼の死後、音楽雑誌に追悼記事が掲載され、ソロアルバム『30才／岩井宏』はCD化、後に再発もされ、その音楽が再び多くの人々に届けられています。
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