岩村定高

岩村定高

岩村定高（いわむら さだたか）は、文政11年（1828年）に佐賀藩士の家に生まれ、明治時代に官僚、政治家として活躍しました。旧名は右近と称しました。

初期

明治2年（1869年）、岩村は佐賀藩の権大参事に就任し、その後、明治政府に出仕して開拓御用掛となりました。開拓権判官、民部権大丞、山形県大参事、同県参事を歴任し、行政官としてのキャリアをスタートさせました。

三重県令としての活躍

明治5年（1872年）、三重県参事に転任。明治6年（1873年）には三重県権令、明治8年（1875年）には三重県令に昇進しました。明治9年（1876年）には現在の三重県が成立し、引き続き県令として県政の基礎確立に尽力しました。

しかし、その治世は決して平穏なものではありませんでした。明治9年（1876年）には、飯野郡で地租改正反対一揆である伊勢暴動が発生し、これを鎮圧。また、明治13年（1880年）には、県会での郡長・郡吏員増俸案の削減に対し、原案を執行し地租から財源を徴収したため、県議30名が辞表を提出する連袂辞職事件が起こるなど、県政運営は困難を極めました。

元老院議官、貴族院議員として

明治17年（1884年）、岩村は元老院議官に就任。明治23年（1890年）の元老院廃止まで在任し、同日錦鶏間祗候を仰せ付けられました。その後、明治24年（1891年）には貴族院勅選議員に任じられ、その職を生涯務めました。

旧三重県庁舎

岩村が三重県令時代に発案した洋風県庁舎は、現存する最古の県庁舎として知られています。この旧三重県庁舎は、明治12年（1879年）に完成し、その後、新庁舎建設に伴い昭和39年（1964年）に解体されましたが、「博物館 明治村」に移築復元され、現在では国の重要文化財として公開されています。

旧三重県庁舎は、間口54mに及ぶ大規模な建物で、玄関を中心に左右対称のデザインが特徴的です。正面には2層のベランダが設けられ、中央の玄関と車寄せ、左右対称の構成は、明治9年（1876年）に建てられた内務省庁舎を模範としたもので、明治初期の木造官庁舎の典型とされています。

栄典

岩村定高は、その功績により、以下の位階と勲章を授与されています。

位階
明治17年（1884年）8月30日 - 従四位
明治19年（1886年）10月20日 - 従三位
明治27年（1894年）5月21日 - 正三位
勲章等
明治18年（1885年）4月7日 - 勲三等旭日中綬章
明治22年（1889年）11月25日 - 大日本帝国憲法発布記念章
明治32年（1899年）1月6日 - 勲二等瑞宝章

死去

岩村定高は、明治32年（1899年）1月7日に70歳で亡くなりました。彼は、明治維新後の日本において、地方行政の発展に貢献した重要な人物として、その名を歴史に刻んでいます。

参考文献

歴代知事編纂会編『新編日本の歴代知事』歴代知事編纂会、1991年。
秦郁彦編『日本官僚制総合事典：1868 - 2000』東京大学出版会、2001年。
衆議院・参議院編『議会制度百年史 - 貴族院・参議院議員名鑑』大蔵省印刷局、1990年。
大植四郎編『明治過去帳』新訂初版、東京美術、1971年（原著私家版1935年）。
* 太政官「職務進退・元老院　勅奏任官履歴原書 岩村定高」明治2年。国立公文書館 請求番号：本館-2A-031-09・職00149100

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