岩波茂雄

岩波茂雄の生涯と業績

岩波茂雄（いわなみしげお）は1881年に長野県で生まれ、日本の著名な出版人として知られています。彼は岩波書店を創業し、近代日本の出版文化に多大な影響を与えました。貴族院の多額納税者議員でもあり、彼の業績は出版だけでなく、政治的な活動にも波及していました。

岩波茂雄は諏訪郡中洲村の農家に生まれ、父は村の助役を務めていました。尋常小学校、高等小学校を経て、1895年に旧制諏訪実科中学校に入学しますが、在学中に父の死去を受けて家庭を支えるため、農業を手伝いながら学業を続けることを余儀なくされました。1899年に上京し、日本中学に転校。この頃、母が学資を仕送りして支えてくれたことが彼の学びを支えました。

新たな環境での挑戦を経て、1901年には第一高等学校に入学。ボート部で活動し、学生生活を楽しむ中で、内村鑑三の思想に影響を受け、人生問題に直面します。1903年には同級生の自殺をきっかけに大きな衝撃を受け、大学を中退しますが、その後再起を図り、1905年には東京帝国大学の哲学科に進学し、1906年に結婚します。

大学卒業後、神田高等女学校で教壇に立ちますが、教師としての自信を失い、退職。1913年に古本業の岩波書店を開業し、高い価格での正札販売を実施。1914年には夏目漱石の小説『こころ』を自費出版し、これが岩波書店の処女作品とされ、以後も漱石全集などの出版を手がけ、日本文学の発展に寄与します。

1921年には雑誌『思想』を刊行し、1931年には『科学』、1934年には『文化』等の雑誌を創刊。また、1927年には「岩波文庫」を創設し、幅広い文学作品を読者に届けました。それに続き、1938年には「岩波新書」をスタートさせ、日本の教養主義を形成する一翼を担います。

彼は日中戦争について批判的な立場を貫き、軍部からの圧力を受けながらも、思想的探求を続けました。1940年には学者を支援するために「風樹会」を設立、出版法違反での取り調べを受けるようになり、1942年には有罪判決を受けましたが、その後免訴となります。

1945年には貴族院に議員として任命され、同年には文化勲章を受章。1946年4月には脳出血により逝去しましたが、その業績は現在でも多くの人々によって語り継がれています。彼の創業した岩波書店の作品は今もなお、多くの読者によって愛され続けています。

故郷の諏訪市立信州風樹文庫には彼の著作が多く所蔵されており、岩波茂雄の名は日本の出版文化の象徴として位置づけられています。

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