岩田祐吉

岩田祐吉：新派から映画界へ、時代を彩った名優

岩田祐吉（いわた ゆうきち）は、明治から昭和にかけて活躍した日本の映画俳優です。1887年に岐阜県大垣市で生まれ、新派劇の世界から松竹蒲田撮影所へ。二枚目スターとして一時代を築き、後年は脇役としてその才能を発揮しました。

新派劇から映画界へ

岩田は中学卒業後、家業の倒産を機に中国へ渡りますが、志半ばで帰国。その後、演劇の世界に足を踏み入れ、1908年に東京俳優養成所（後の東京俳優学校）に入所しました。同期には田中栄三、諸口十九、上山草人、勝見庸太郎など、後に映画界を支える面々がいました。1911年に同校を卒業後、河合武雄の門下に入り、公衆劇団に参加。新派劇の幹部として活躍しました。

1920年、創立間もない松竹蒲田撮影所に入社し、映画の世界へ。翌年公開の『悪魔の崖』で初主演を飾り、栗島すみ子と共演した『虞美人草』で人気を博しました。以降、『酒中日記』『暮れ行く旅路』『乳姉妹』など、多くの作品で栗島と共演し、人気スターの仲間入りを果たします。特に『船頭小唄』は、主題歌とともに大ヒットし、岩田の名を全国に知らしめました。

円熟味を増した脇役としての活躍

1930年代に入ると、岩田は中年の脇役へとシフトしていきます。島津保次郎監督の『隣の八重ちゃん』などでは父親役を演じ、渋みのある演技で観客を魅了しました。1938年以降は新興キネマにも出演しましたが、1942年公開の『春遠からじ』を最後に映画出演はありません。戦後は鎌倉で静かに暮らし、1979年には長年の映画界への貢献が認められ、第3回山路ふみ子映画功労賞を受賞しました。

1980年1月18日、老衰のため東京都世田谷区の自宅で92年の生涯を閉じました。

主な出演作品

虞美人草 (1921年)
船頭小唄 (1923年)
乃木大将伝 (1925年)
父帰る (1927年)
* 隣の八重ちゃん (1934年)

岩田祐吉は、新派劇から映画界へ、二枚目スターから名脇役へ、と時代に合わせてその姿を変えながら、日本の映画史に確かな足跡を残しました。彼の出演作品は、今もなお多くの人々に愛され続けています。

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