岬多可子

岬 多可子（みさき たかこ）氏は、1967年9月17日に千葉県に生を受けた、日本を代表する現代詩人の一人です。お茶の水女子大学生活科学部の食物栄養学科を卒業という異色の経歴を持ちながら、詩の世界で独自の道を切り開いてきました。

1990年に第7回ラ・メール新人賞を受賞し、詩人としてのキャリアを本格的にスタートさせました。この受賞は、彼女の持つ独特な感性と表現力が早くから認められたことを示しています。翌1991年には初の詩集『官能検査室』を思潮社より刊行し、その後の詩作活動の礎を築きました。

キャリアを通じて、岬氏は精力的に詩集を発表し、その作品は高い評価を受けてきました。1996年には第二詩集『花の残り』を刊行。そして、2006年に書肆山田から刊行された詩集『桜病院周辺』は、2007年に権威ある第37回高見順賞を受賞するという快挙を成し遂げました。この受賞は、彼女の詩が持つ深遠さと現代社会を鋭く切り取る視点が広く認められた証と言えるでしょう。

その後も創作活動は続き、2011年には詩集『静かに、毀れている庭』（書肆山田刊）で第4回小野市詩歌文学賞を受賞しました。これらの連続した受賞は、岬氏が単なる新人作家に留まらず、日本現代詩壇において重要な存在として確立されたことを示しています。彼女の詩は、日常の中に潜む微細な揺らぎや、人間の内面世界の複雑さを、時に官能的に、時に冷徹に描き出すことで知られています。

近年もその創造性は衰えることなく、2015年には詩集『飛びたたせなかったほうの蝶々』（書肆山田刊）を発表。そして、2020年に刊行された詩集『あかるい水になるように』（書肆山田刊）は、2021年に第2回大岡信賞を受賞しました。この賞は、詩人・評論家の大岡信氏の名を冠し、優れた詩作品や詩に関する活動を顕彰するものであり、岬氏の最新の仕事が依然として高い水準にあることを証明しています。

岬多可子の詩は、そのタイトルからも示唆されるように、『官能検査室』における人間の生理や欲望への探求、『桜病院周辺』における場所や記憶にまつわる考察、『静かに、毀れている庭』における内面の荒廃や再生、『あかるい水になるように』における希望や清澄さへの希求など、多岐にわたるテーマを扱っています。緻密に練られた言葉選びと、読者の心に深く響く独特のリズム感は、多くの詩人や読者に影響を与えています。彼女の詩は、難解さの中にも普遍的な感情や問いかけを含んでおり、現代社会に生きる我々に新たな視点を提供し続けています。

主な著作として、以下の詩集があります。

『官能検査室』（思潮社、1991年）
『花の残り』（思潮社、1996年）
『桜病院周辺』（書肆山田、2006年）
『静かに、毀れている庭』（書肆山田、2011年）
『飛びたたせなかったほうの蝶々』（書肆山田、2015年）
『あかるい水になるように』（書肆山田、2020年）

文学賞を多数受賞し、その評価を不動のものとしている岬多可子氏は、これからも日本の現代詩の可能性を広げていくことでしょう。その探求心と表現力は、今後発表される作品にも期待を抱かせます。

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