岳温泉

福島県二本松市の岳温泉：安達太良山の恵みとユニークな歴史

岳温泉は、福島県二本松市に位置する、歴史と個性豊かな温泉地です。雄大な活火山、安達太良山の中腹に湧き出る温泉は、1955年に国民保養温泉地に指定され、その豊かな自然と癒しの湯で多くの人々を魅了してきました。

豊富な湯量と神秘的な「ミルキーデイ」

岳温泉の源泉は、安達太良山直下にあるくろがね小屋付近にあり、そこから8km離れた温泉街へは、引湯管を通して温泉が供給されています。通常は透明な温泉ですが、週に一度、乳白色のにごり湯となる「ミルキーデイ」が訪れます。これは、源泉に含まれる豊富な硫黄などの成分が空気と触れることで起こる現象で、岳温泉の名物となっています。ミルキーデイは通常月曜日ですが、天候などにより変更となる場合があります。

温泉の供給を維持するためには、湯守と呼ばれる人々による地道な努力が欠かせません。彼らは毎週、源泉地帯まで行き、パイプ内に付着した湯花を取り除く「湯花流し」という作業を行っています。冬にはスノーシューを履き、雪の中から源泉や点検口を掘り出すという、厳しい作業です。この湯花流しの作業によって、透明な温泉がミルキーデイのような、よりなめらかで肌触りの良い温泉へと変化するのです。

高村光太郎と智恵子抄、そして温泉街

岳温泉は、詩人高村光太郎の『智恵子抄』にも詠まれた安達太良山の斜面に広がり、阿武隈川を見下ろす絶景を望むことができます。温泉街には、岳温泉神社など歴史を感じさせるスポットも点在し、風情豊かな散策が楽しめます。

平安時代から続く歴史と幾多の変遷

岳温泉の歴史は古く、『日本三代実録』や『日本紀略』には、平安時代に既に朝廷から位階が授けられたとされる記録が残っています。江戸時代中期までは「陽日温泉」と呼ばれ、源泉地付近に温泉街が形成され、湯女も存在する賑やかな歓楽温泉場として栄えていました。しかし、1824年の土石流災害によって大きな被害を受け、多くの犠牲者を出しました。

その後、現在の場所に移転し「十文字岳温泉」として再建されましたが、戊辰戦争で焼失。明治時代には「深掘温泉」として再建されるも、火災により再び壊滅的な被害を受けました。幾多の困難を乗り越え、地元住民の努力と実業家木村泰治氏の投資によって、現在の岳温泉が形成されていったのです。1955年には国民保養温泉地に指定され、新たな発展の歩みを始めました。

ニコニコ共和国の誕生：地域活性化のユニークな試み

1982年、東北新幹線開業による観光客減少を危惧した岳温泉旅館協同組合は、当時流行していた「ミニ独立国」ブームに目をつけ、「ニコニコ共和国」を開国しました。温泉街の事務所を「国会議事堂」、豆腐店を「蛋白研究所」と名付けるなど、ユーモラスな設定が観光客を惹きつけました。独自通貨「コスモ」の発行や「ニコニコ標準時」の採用など、斬新な試みは大きな話題となり、観光客増加に貢献しました。2006年に「日本国への統合」を宣言し、24年の歴史に幕を閉じましたが、そのユニークな取り組みは、地域活性化の成功例として今も語り継がれています。2020年には、岳温泉観光協会とJICA二本松青年海外協力隊訓練所の訓練生による調査が始まり、ニコニコ共和国の歴史と取り組みの全容解明が進められています。

アクセスと周辺情報

岳温泉へのアクセスは、JR二本松駅から福島交通の路線バスを利用できます。車で訪れる場合は、東北自動車道二本松ICが最寄りのインターチェンジです。周辺には、安達太良山や岳ダムなど、自然豊かな観光スポットも数多くあります。

まとめ

岳温泉は、豊かな自然と歴史、そしてユニークな取り組みが融合した魅力あふれる温泉地です。安達太良山の雄大な景色と癒しの温泉、そしてニコニコ共和国というユニークな歴史を肌で感じることができる、忘れられない旅となるでしょう。

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