峰岸米造

峰岸米造：戦前日本の教科書を支えた教育者

峰岸米造（みねぎしよねぞう、1870年2月26日-1947年1月10日）は、明治から昭和初期にかけて活躍した日本の教育者です。群馬県前橋市に生まれ、農家の出身でした。幼少期から勉学に励み、小学校卒業後、元伊勢崎藩の儒学者・新井雀里氏に師事するなど、幅広い知識を習得しました。

若い頃から教育への情熱を燃やし、年齢を偽って小学校教員の検定試験に合格。その後、桐生小学校、桐生西小学校などで教鞭を執りながら、英学塾や数学塾にも通い、さらに研鑽を積みました。群馬師範学校卒業後は、東群馬・南勢多郡立高等小学校の訓導を経て、東京高等師範学校を卒業。同校で地理と歴史を教える傍ら、前橋中学校長沢柳政太郎氏の招きで群馬県立尋常中学校群馬分校の設立にも尽力しました。

東京高等師範学校附属中学校（現在の筑波大学附属中学校・高等学校）では教諭、教授として活躍し、生徒監として剣道部の設置や剣道の正課採用にも尽力しました。昭和4年（1929年）からは東京文理科大学講師も兼任。昭和12年（1937年）に東京高等師範学校を退官し、従三位勲二等に叙せられ、名誉教授の称号を授与されるなど、その教育功績は高く評価されました。退官後も海軍経理学校嘱託教授を務めましたが、昭和16年（1941年）に辞職しています。

峰岸米造の最大の功績は、戦前の日本史・世界史教科書の編纂です。彼の手がけた教科書は全国の中学校・師範学校で広く用いられ、多くの生徒・学生の教育に貢献しました。教科書執筆は、単に歴史的事実を羅列するだけでなく、生徒が理解しやすいよう工夫が凝らされ、分かりやすい解説と豊富な図表が特徴でした。彼の編纂した教科書は、当時の教育現場に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

代表的な編著書には、『本邦制度史』、『西洋史綱』、『西洋史参照図画 附・系図年表』、『内国史綱』、『本邦史綱』、『国史教科書』、『西洋略史』、『日本略史』、『西洋史講義要領』、『日本上古史講義』、『日本史教科書参照図 女子用』、『女子用外国史教科書 東洋篇』、『日本歴史 師範学校歴史教科書』、『国史講座 古代史』、『国史講話』、『女性国史読本』、『日本近世百年史』、『輝く皇国史』などがあります。これらは、当時の人々の歴史認識や教育方法を反映した貴重な資料となっています。

峰岸米造は、1947年1月10日に死去しました。彼の墓所は多摩墓地ですが、郷里の善昌寺にも分骨されています。生涯を教育に捧げた峰岸米造の功績は、現在も日本の教育史に深く刻まれています。彼の教育者としての理念や、教科書編纂における工夫などは、現代の教育現場においても学ぶべき点が多く存在すると言えるでしょう。彼の編著した教科書は、当時の社会情勢や教育思想を理解する上で重要な史料であり、歴史研究においても重要な位置を占めています。

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